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それからというもの、私は足しげく「猫の舌亭」に通った。もはや、常連と言っても過言ではないだろう。
さて、今日はどの子と遊ぼう?
店にはアメリカンショートヘアの「ケント」、茶トラの「ユカリ」、シャムネコの「ハヤト」、三毛猫の「リュウスケ」と、計一〇匹ほどの猫がいる。性格もそれぞれ違って癒されるが、やっぱりマユミかな。
もはや、私の推し猫と言ってもいいだろう。
時々店に通う中で私以外の客も目にしたが、誰もが私のように疲れた顔をしており、人によっては玩具で猫と遊ぶ気力もない客もいた。けれど猫屋敷のラングドシャを食べ、猫を撫で、ザラザラの舌で舐められた後は幾分か生気を取り戻した顔で出て行く。
かく言う私も同僚から「最近、明るくなったね」と言われるようになった。それはそうだろう。だって、取引先で嫌なことがあっても「猫の舌亭」に行けば、マユミをはじめとした猫たちや猫屋敷に労わってもらえるのだから、やる気も出るというものだ。
今日も今日とて私はマユミを撫で、逆にマユミからはザラザラの舌で舐められる。すると猫屋敷の言う通り、舐められるたびに肩に圧し掛かっていた疲れ
やストレスが軽減していった。
そして、私は少しずつ頑張ろうと思えるのだ。
「マユミちゃんのおかげだよ」
社会人になってから私は身支度のためとは言え、鏡と向き合うのが嫌いだった。自分の真っ黒な目──それは日本人特有の茶色や黒といった瞳というわけではなく、この世の全てに絶望したような澱んだ目と向き合うことにもなるから。けれど、また昔のように目に光が戻ってきた気がする。
いつか世界の全てが輝いて見えた子供のようなキラキラした目に戻れるだろうか。私は宝石のように透き通った目を持つ猫たちを見つめ願った。
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