春が、来た

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 太った?  理人さんが?  いつ? 「今年は、いつもより雪が多かったし……感染対策もあって、ろくに外、出てなかったから、急に、気になって……」 「……」 「今日、久しぶりに体重計乗ったら……増えてた……」 「どのくらい?」 「2キロ……」  って、そんなの誤差の範囲じゃないか。 「理人さんの気のせいじゃないですか?」 「いや、違う! 数字、嘘つかない!」  なんだ、それ。  体重なんて風呂入る前と後でも変わったりするし、朝と夜でもタイミングがズレると変わったりするし、そもそも理人さんは元が細いから、こうやって腹の肉を親指と人差し指で摘まもうとしても、全然できな――あれ? 「ほんとだ。ちょっと摘まめた」 「なっ……!?」 「プッ、冗談です」  摘まめたのはほんとだけど。 「別にちょっとくらい太ったっていいじゃないですか。奇跡のオッサンが、ちょっと普通のオッサンに近づいただけなんだから」 「そういう問題じゃない! 俺の方が年上だから、油断したくないんだ!」 「それって、佐藤くんが若い子に走っちゃうかもしれないから~……とか、心配してるってことですか?」 「わ、悪いかよ……」  いや、全然悪くない。  かわいいから。  でも―― 「この年になったら、もう四歳差なんてあってないようなものでしょ」 「そう、だけど……」 「そんなことより、ダイエットとか言って,理人さんが食べたいものを我慢したりする方が俺は嫌です」  美味しそうにアイス食べる理人さんを眺めてムラムラ……ゴホン、ニヤニヤするのが夏の楽しみなのに。 「じゃあ、ジムにでも通うかなあ……」 「それはもっとダメです」 「なんでだよ! ジムは別にいいだろ!?」 「ダメ、絶対」  だって、狙われる。 「うー……まあ、佐藤くんが気にならないって言うなら良いか……」 「そういうことです」  他の人がどう思うかなんて、関係ない。  理人さんは、俺のことだけ気にしていればいいんだから。  ――て、ことで。 「んあっ!」  すっかりヤる気をなくしていたそれに触れると,理人さんが憤慨する。 「い、いきなり何すんだ!」 「だって、理人さんがかわいいから」 「……っ」 「理人さんがどんなに太っても、俺はこうやって欲情するし」 「あっ……あっ」 「つるっぱげになっても、ヨボヨボのおじいちゃんになっても、かわいいって言いまくる自信があります」 「ふあぁッ」  熱の中心を扱き上げながら、起ち上がり始めた胸の頂をいじめる。  遠慮がちに腰が揺れ始めたのを見てわざと手の動きを止めると、理人さんは、潤んだ視線にありったけの抗議を込めた。 「わかった?」 「……ん」  こくんと頷き、理人さんが俺の上半身を抱きすくめる。 「わかったから……」  ――もう、して。  切ない欲求を直接耳に注ぎ込まれ、全身がゾクゾクした。  ついさっきまで渇いていたふたつの瞳が、すっかり熱に浮かされている。  今すぐむしゃぶりつきたい衝動を抑え、俺は無理やり平静を装った。 「じゃあ、脱いで?」  理人さんは、スッと目を細めた。  結局そこかよ、変態――そんな心の声が聞こえてきそうだ。  でも、しょうがない。  俺は、変態なのだ。  半分だけなんて、物足りない。  全てを、俺に晒してほしい。  無防備な理人さんの姿を視界の中に閉じ込めて、俺のものだと実感したい。 「……」  足に引っかかっていたズボンを抜き取り、理人さんは内腿をもじもじと擦り合わせた。  でも、俺は動かない。  生まれたままの姿になった理人さんを、ただじっと見つめる。  やがて、理人さんの唇がへの字に曲がった。  俺に鋭い一瞥をよこしてから、自分から身体をベッドに横たえる。  膝を立て、脚を開き、引き締まった尻肉にゆっくりと手を添えると、くぱあ……とそこを開いてみせた。  蒸れた秘部の中心が、なにかを強請るようにヒクついている。  ()れて()がれたふたつのアーモンド・アイが、もう一度俺を見上げた。 「早く……愛して」  ああ。  やっぱり、春の理人さんはかわいい。
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