Die Familie./お願い、守って

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8  街から車で小一時間ほど南に走った町の中で最も大きな敷地を誇る邸宅の玄関先に、心配そうに顔を見合わせては右に歩いたり左に小走りになったりと落ち着かない様子の老夫婦がいた。  二人の視線の先-といっても敷地の端を示す門扉と人の背丈の二倍以上はある鉄柵は小さなものに見える程離れている-に真っ直ぐに伸びる一本道があるのだが、二人が今朝の早くから見守っている間にその道を通ったのは野生の兎たちと出勤していくギュンター・ノルベルト運転の古いビートルだけだった。  早くあの小さな門扉が開いて白い車に乗ったウーヴェが来ないものかと老夫婦が顔を見合わせながら溜息を吐いていると、背後の背の高いドアが開いてアリーセ・エリザベスが顔を見せる。 「フェルが来るまで中で待っていればいいでしょう?」 「アリーセ様、でも、ここでウーヴェ様を待ちたいんです」  アリーセ・エリザベスの呆れが少しだけ含まれた、だけど愛情に満ちた声に頷きつつもここを離れたくないと首を振ったハンナにヘクターも申し訳なさそうな顔で妻の意見に同意する。 「じゃあ仕方ないわね。ここに椅子を運ばせるから座って待ってなさい」 「そんな、申し訳ないので構いません、アリーセ様」 「あなた達を長時間立たせたままなんて私は嫌よ。ここで待つならちゃんと椅子に座ってちょうだい」  彼女の声は厳しく冷たいものだったが二人を見る目には愛情だけが溢れていて、二人もその思いに気付いて頷くと、こんな所に椅子を運んで貰うのは気が引けると苦笑して開いたままのドアから中に入ろうとする。
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