81人が本棚に入れています
本棚に追加
いつの間にか小さくなってしまった優しくて暖かな印象だけを残すヘクターとハンナの背中に手を宛いながら中に促したアリーセ・エリザベスは、車のエンジン音が背後から聞こえてきたことに気付いて顔を振り向け、今もっとも待ちわびている人が来たことを知ると、足を止めた二人の顔を交互に覗き込みながら来たわよと笑みを浮かべる。
「アリーセ様?」
「ウーヴェ様が帰ってこられたのですか?」
彼女の言葉に二人の顔が一瞬にして晴れ渡った青空のような笑みに彩られ、アリーセ・エリザベスも一つ頷いて踵を返す。
「ようやく帰ってきたわね」
以前、兄から実家で二人の世話をするように告げたと教えられたのだが、それから何日経ってもウーヴェから連絡もなかったため、もしかするとここには帰って来ないのかも知れないと危惧していた彼女の不安は杞憂だったようで、再度玄関から転げかねない勢いで出て行ったハンナとヘクターに溜息を零すが、玄関から門にまで真っ直ぐ伸びる道をキャレラホワイトのスパイダーがゆっくりと走ってくるのを細めた視界で見守る。
車は秋の日差しを跳ね返しながら噴水を回り込んで玄関へと繋がる階段下で止まると、ドライブ用のサングラスを外しながらウーヴェが姿を見せる。
「ウーヴェ様!」
ウーヴェが階段の手摺りから身を乗り出しているハンナを見上げて笑みを浮かべると、ヘクターが年齢を感じさせない素早さで階段を駆け下りてくる。
「ウーヴェ様……! 久しぶりにございます……!」
「久しぶりだな、ヘクター。……ハンナのことは聞いた」
最初のコメントを投稿しよう!