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だから今痛みはないのか、苦しいことはないのかと問えば、腕の中の小さな身体が大丈夫だと気丈な声を発する。
「無理をする必要はないからな?」
「ええ、ええ、ありがとうございます、ウーヴェ様」
今回の第一の目的であるハンナとヘクターと一緒に沢山の思い出を作る第一歩を踏み出そうとしたウーヴェだが、階段の手摺りに寄り掛かりながら見下ろしている姉に気付いて笑みを浮かべる。
「エリー、遅くなった」
「本当にね。連絡ぐらいしなさい、フェル」
姉はいつまで経っても優しく厳しいものだと改めて気付き、ハンナと荷物を持ったヘクターに頷いて階段を登ろうとするが、大切なものを思い出したと呟いて踵を返し、驚く三人の前で助手席のドアを開けて金色の毛並みを燦然と輝かせるテディベアを抱き上げる。
「テディベアを持ってきたの!?」
「……リオンがどうしても持っていけと、いう、から……」
いい歳をした男が助手席にテディベアを座らせて町中を車で走るのは結構勇気が要るものだと頬を僅かに赤らめたウーヴェは、今ここにいないリオンのせいにしてしまおうと無意識に判断し、ちゃんとシャツとサングラスも掛けさせたと笑うとヘクターとハンナが顔を見合わせてくすくすと笑い出し、アリーセ・エリザベスが呆れたような顔になるものの、テディベアを抱いた弟など何年ぶりに見るのかしらと呟いて笑みを浮かべる。
そんな三人の笑い声に顔色を更に赤くさせたウーヴェだが、階段を登った先で待っているアリーセ・エリザベスの肩に手を置き頬にキスをすると彼女も弟の頬にキスをし、ついでにテディベアの頬にもキスをする。
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