Die Familie./お願い、守って

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「中に入りましょう。母さんも中でずっと待っているわ」 「ミカはどうしたんだ?」 「まだ寝てるわ」  昨夜は遅くまで起きていたようだと肩を竦める姉に苦笑した弟は、久しぶりに帰ってきた実家をぐるりと見回して感慨深げに目を細める。  この家を捨てる思いで出て行く時は既に父や兄とは絶縁状態だったため、母と姉、そして今ここにいる祖父母のような二人に見送られたのだが、大学入学を切っ掛けに半独立状態だったウーヴェは己のクリニックを開設する際に完全に家を出たのだ。  振り返れば長いようで短い時間、ここにいる三人は常にウーヴェを気遣ってくれていたことを思い出し、足を止めたウーヴェを振り返って怪訝そうに首を傾げるアリーセ・エリザベスに何でもないと答えると、母が待っているリビングに向かって歩き出す。  ウーヴェの自宅もかなりの広さを誇るがそれが小さく感じる屋敷の廊下を進み、最も日当たりが良くて居心地の良いリビングのドアをアリーセ・エリザベスが開けると、その音に気付いたイングリッドが立ち上がる。 「お帰りなさい」  ウーヴェが家を出てから何度か帰ってきた事はあったがそれは短時間の滞在であり、今回のように二週間以上もここで寝起きすることはなかったため、彼女も何か思うことがあるようで、軽く頷くウーヴェの前に静かに歩み寄るとテディベアを抱える息子に満面の笑みを浮かべてそっと抱きしめる。 「……お帰りなさい、ウーヴェ」 「……二週間……」  世話になりますと呟くウーヴェに母は悲しそうな声でそんな言葉を使うのではありませんと優しく窘める。 「このテディベアはどうしたの?」
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