【喫茶 青猫のピアノ】の告白

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あれから猫町は、みねたちの家へ遊びに来なくなった。 いち曰く「何度誘っても“用事があるから”ってはぐらかされちゃう」らしかったが、みねにとってはその方がありがたかった。 今会ったとしても、どんな顔をして話せば良いのか解らないからだ。 あの時は運良くいちに見られずに済んだが……もし猫町が何食わぬ顔で遊びに来たとしても、自分が挙動不審に振る舞ってしまい悟られでもしたら本末転倒だ。 (これで良い、これで良かったんだよ。なのに何で……) 霧がかかったように、胸の内が晴れないままなのか。 あれからずっと脳裏にチラつく、猫町の背中。 『ごめん、困らせちゃったね』 (何で……あんな、寂しそうに言うのよ) 包み込まれた熱が背中によみがえり、拳を握る。 (何で、あんなことしたのよ) 猫町はいちが好きで、いちもまた猫町が好き。ならば何故、尚更あんなことをしたのか。考えれば考えるほど、分からなくなっていく。そして、胸が苦しくなっていく。 猫町は、一体何がしたいのか。 そう考えていたところ、みねのスマートフォンが震え出した。 開けばメッセージアプリに、いちから連絡が入っていた。 [ゴメン、今仕事終わった! もし部活終わってたら、いつもの喫茶店で待ち合わせない? 今日はそこでご飯食べよっ!(๑´ڡ`๑)] “いつもの喫茶店”――その文字を見て、一瞬だけ指先の動きが止まった。 食事も美味く、喫茶店にしては珍しく夜の21時まで営業しており、のんびり出来る。いちもみねもお気に入りの店で、いつもなら喜んだところだが……今は素直に喜ぶ気にはなれなかった。 その店の名前が、猫町を彷彿とさせるからだ。 今行くには、タイミング的にマズイようにも思えた。部活を終えたばかりで、身体的にも疲れていることもあり、どうしようかと迷う。 しかし激しく身体を動かしてきた後の腹は正直者で、行こうよと言わんばかりに腹の虫が鳴いた。 タイミング悪く鳴る自分の腹の虫に呆れながらも仕方ないと割り切ることにし、文字キーを打ち込んでいった。 [良いよ。今着替えようとしてたとこだし、終わったらすぐに向かうね] するとすぐさまいちからまたメッセージが入り、 [りょかい! あ。せっかくだし、可愛い服装でヨロ(#^ ^#)b] (え。何で可愛い服装……?) いちの要望の意図が解らず首を傾げるが、まぁ良いかと気にするのをやめ――軽めにシャワーを浴びて、部屋に戻り淡々と選んでおいた服を着た。 淡い灰色のチュールプリーツスカートに白いパーカーと、甘さ控えめながらも可愛いものを身に着けた自分が全身鏡に写る。 (よし、どこもおかしなところはナシっと) いちとの外食で、しかも行き慣れた喫茶店なのだからそう気を張らなくて良いと思ったが……何となく気にかかってしまう。 しかし我ながら、可愛いものを普段あまり着ない自分にしては悪くないチョイスなのではないか? 鏡の中の自分をまじまじと見つめ、そう言い聞かせる。 ようやく不安な自分を納得させ、黒いボディーバックをかけると部屋を出た。
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