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「なんて書くの?」
時刻表のことだろう。俺は少しだけ考え「臨時列車、かな」と答えた。
「面白い。さすがライター」笑いをこらえながら祥子は言った。「そういう原稿、待ってますよ」
無責任な物言いだと思ったが、不思議と力をもらえた気分だった。将来のことはまったく見えていないが、何とかなる気がしてきた。
「収入が増えたら、もうちょっと広めの物件に引っ越そうか」
こちらも無責任に言ってみた。
「またその話? どうせ夜中に仕事するからヤだ」
「もう一部屋あれば、二人とも昼に仕事できるだろ」
祥子は感心するような、こちらを試すような、眉を上げた笑顔で何度も頷く。
「じゃあ、猫が飼えるとこにしない?」
いいねえと返事をしつつ、なおのこと収入を増やさなければと前向きな気持ちになる。
「どんな猫にしよっか。私は……」
時刻表に出ている近所の猫たちを例に挙げながら、祥子は好みの猫を決めようと吟味を始めた。俺はどんな猫でも構わないが、その猫には鈴をつけようと思った。
了
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