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「皆それぞれの道に別れて行くし、限られた友達と話して三々五々…… まぁ、中学生より大人になったんじゃないのか」
教室で受け取った卒業証書を筒に詰めると、そそくさと帰った2人はまた練習を始めた。
「そう言えば、康介はどうするんだ」
「何を? 」
「俺は声優を目指して活動を始めたけど、やるのかい」
「まだ決めかねているんだよなぁ。俺は大学で文学の勉強をしてみて、本格的な小説を書いてみたいんだ。もう書き始めているんだけど、自分で演じたい、という気持ちよりも創作したい気持が強いかなぁ」
唸って考え込みながら話す。
あまり考えがまとまらない、と言う割にははっきりした目標があるように感じられた。
「俺もシナリオを書いてるけど、自分で演じることと創作は通じているんじゃないのか」
「それは同感なんだけどね。やっぱり創作して、世の中にないストーリーを発信してみたい。それを沢山の人に読んでもらうことに喜びを感じる気がするんだ」
「そうか…… 」
それっきり話題を変え、コンテンツをアップするとパソコンを閉じて考え込んだ。
「俺も、声優を目指すって宣言したものの、オーディションでやらかしてから、表現したい欲求が強くなった気がする…… 」
そんなある日、文彦のスマホに電話が掛かってきた。
「もしもし。私は先日オーディションの試験官をしていた声優事務所『ROUGH STYLE』の早川と申します」
「はい」
突然のことに面食らって、相手の真意がわからないまま空返事をした。
「実はね。先日の荒井君の演技を見て、最近の若者にない煌めきを感じてね」
「はあ」
「君は面白い! 」
力強く、そして明るい声に、緊張が少しほぐれた。
「どういうことでしょう」
「いやぁ。ざっくばらんに言うとね。自分でオーディションのシナリオに手を加える新人なんて、ここ何年も会ったことがないんだよねぇ」
「でも、シナリオライターさんには失礼なことをしてしまったと思ってますが…… 」
口ごもりながらも、少しずつ相手の熱意が分かってきた。
「いやいや。もちろん現場では空気を読んで欲しいところだけどさぁ。だけどね。君の現場度胸は失わないで欲しいんだなぁ」
随分文彦のことを買ってくれているようだった。
「社長にも紹介したいし、うちに声優登録しに来て欲しいと思って電話したのだよ」
「わかりました。ありがとうございます」
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