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猫の店
次の日、僕は午前の授業しかなかった。ここでは、授業がないということは、即、仕事が上がりということを意味していた。
そこで僕は、昼食に猫のお店に行くことにしたのだった。
授業を終え、そそくさと職員室を出たところで、下村さんとばったり。
「ホントに行くの?一人で」
「あ。うん。一緒に行く?」
「ううん。午後も授業だし」
「そうだね」
「なあんかね」
「ん?」
「猫ばっかりは違うような気がするんだよね」
「え?」
「あのね。動物愛護とかそういうんじゃないからね、私」
「うんうん」
「イメージがその、そぐわないっていうか」
「犬は?」
「犬は、場合に寄っちゃありかもしれない」
「そこがわからん」
「うん。そこがわからん。私も」
「違和感がないことはないよ、僕も」
「うん」
「でも、食べてみないとわからん」
「だね。感想、楽しみにしてる。教えて。今晩」
「おう」
そして僕は、炎天下、片手にメモを持ち、自転車をこいで猫の店に向かったのだったけれど。
初めは道行と合っていた地図は、途中からわからなくなった。
ないはずの道がある。
あるはずの道がない。
それでなくとも、かつて旧王朝のあったハノイは道の曲がり方が複雑だった。大量のバイクと自転車が行きかう道の途中で、僕は完全に迷子になった。
猫の店は見つからなかった。
結局1時間以上、炎天下で自転車に乗り疲労困憊した僕は、適当な屋台でフォーを一杯食べるとそのまま寮まで戻ってきたのだった。
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