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「うぅ…お、重………」
俺が千明っちを押し倒すような形で倒れてしまったため、俺の下で千明っちが呻き声をあげる。
「ありゃ、ごめんねぇ。」
千明っちの頭の両側に手を付き、上半身を起こす。自然と千明っちを見下ろす。
「千明っちだいじょ……………」
普段はふわふわというかボサボサな前髪が転けた拍子に持ち上がる。途端、俺は声が詰まってしまった。
『あの鬱陶しい髪の毛の下は案外イイ面してんのかもしれねえぞ。』
さっきのかいちょーの言葉が何故か思い出される。そういえばあの時、変にニヒルな笑みを浮かべていたのはこれになにか関係があったのかもしれない。
俺はそのまま千明っちの顕になった顔を見下ろす。いつもの挙動や髪型とは似つかない、くりっとした黒い二重目に小さくも高い鼻、全体的にバランスの整った顔………
「伊織!伊織!なあどっかぶつけたのか?」
俺は突然両側から頬を挟まれ、目の前の相手に目を合わされる。
とっくに俺を押しのけて起き上がっていたのにも気づかず、惚けていたようだ。先程までと同じように、前髪も顔の上半分を覆っている。
千明っちは大声ではない冷静な声で俺の顔をのぞき込む。俺はそれには答えられず、無言のまま千明っちの前髪に手を伸ばす。
「っ!」
ドスッ
触れようとした瞬間、千明っちが俺の手から逃れるように勢いよく後ろに飛び退き、尻もちをつく。
「び…っくりした…!!なんだよ!」
俺もびっくりした。色んな意味で。
「あ…えと、ごめんごめぇん!ちょっと埃が付いてただけだよぉ!」
「それならなんか言ってから取れよな全く……。」
「ごめんてぇ…………」
千明っちは一瞬強ばったように見えたが、すぐに元に戻った。
前髪触られるの嫌いなのかな…悪いことしちゃった。
「………伊織、」
「ん?」
「…いや、なんでもない。」
千明っちはそう言って立ち上がった。
「えぇ〜?なになにぃ?俺になんか言いたいことあんのぉ〜?もしかして惚れちゃった?」
俺もパッと立ち上がり、千明っちの腕に自分の腕を絡ませる。
「うるせえ邪魔だ!は!な!せ!」
「相変わらず冷たいなぁ〜。」
本当に、随分冷たくなっちゃった。
「俺もう風紀室に戻るんだからお前も生徒会室に戻れ!」
「えぇ〜?いいじゃん俺も連れてってよ!」
「馬鹿か、暴動が起こるだろが!」
まあでもそれはさ、俺と今はまだあんまり仲良くないからだと思うんだよね。
「俺学園のアイドルなのにぃ?」
「ただの生徒会会計だろ。」
だったらさ
「まあでも、俺は千明っちが仲良くしてくれるならいいやぁ。」
「誰がするか!」
これから仲良くなればいいよねぇ
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