prologue

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「――いいですよおれ。  嘘でもいいんで、おれを――沢渡(さわたり)さんの彼氏に、してください」  まっすぐに、射抜くような目をよこすあなたの誠実さが、伝わった。事情を説明していないにも関わらず、あなたは、わたしの、提案を受け入れた。  失恋の痛みが骨の髄まで響いているはずなのに、あなたの……強い、強い、眼差しに、胸を射抜かれ、わたしの反応は、遅れた。  言葉を失ったわたしに、あなたはこう告げた。 「おれは……あなたのためだったら、なんだってします」  この時点でわたしはまだ知らなかった。嘘から始まった関係。嘘をつくことで成立する関係。――なのに。  こんなにも、あなたに、溺れてしまうだなんて。  *
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