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プロローグ
「あっちー……」
青年、紅來夢は自身の通う高校へ向かう最中、思わずぼやいた。
年度始めが4月から9月へと変わり早10年の時が経った2056年、來夢は今日から高校2年生となる。
ここは東京の郊外。
もう百メートルもすれば学校の校門が見えてくる、というところで足を止めた。
自分の通る道を塞ぐかのように、1人の少女が佇んでいたのだ。
着ている服からして、自分の通う高校の生徒だろうか、と推測する。
「おはようございます、紅來夢様」
彼女の前で立ち止まると彼女は恭しく話しかけてくる。
「……様ってなんだ様って。
てか、誰ですか」
來夢が彼女に問い掛けると彼女は來夢に跪く。
一見するとモラハラ男に支配される哀れな少女ともとれる。
「申し遅れました。
私、桜華澪亜と申します。
桜華家当主の命により、吸血鬼の鬼憑であらせられる來夢様の護衛を勤めさせていただく者です。
未熟者ですが、どうかよろしくお願い致します」
彼女は抑揚の無い声で告げる。
「えっ……と?
状況が読めないんだけど…
後周りからの視線が痛い」
「何処か痛むところがあるのですか?
病院に行くべきではないでしょうか」
彼女は大真面目な顔で見当違いな事を言い出す。
「違うそうじゃない」
「……では、どういうことでしょう」
「……取り敢えず、話が長くなりそうだし、まず学校に行かない?」
「かしこまりました。
では、参りましょう」
彼女は立ち上がり、來夢の後を存在感無くついていく。
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