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來夢は自分の教室へと入る。
この学校では、始業式の2日後に入学式があるのだ。
「うぃーっす」
「おい、來夢。
お前、さっきの可愛い子誰だよ」
教室に入ると恨みがましい目をした親友が近付いてくる。
紅來夢の親友、波瀬夏樹。
彼と來夢は小学校時代からの腐れ縁だ。
「あー……」
來夢は言葉に詰まる。
──護衛、って言ってもどうせ信じてくれないだろうしな……何だ?妹の友達?いや、それは無いな。
來夢は脳内でどんな言い訳を言おうか考えるが、何一つとして良い案が浮かばない。
テストが毎回赤点ギリギリの男に、どんな名案が浮かぶというのだろうか。
「んーっとな、えー」
「何だよ」
ジトリと見てくる夏樹に來夢はしどろもどろになる。
「んーと、近所の友達だ」
「……はぁ?」
これだ、と言わんばかりに來夢は言う。
いや実際彼の頭ではこれが1番ありそうだと考えたのだ。
「とは言っても、最近はずっと会ってなかったんだけどな」
「……何か会ったのか?」
「いや?あの子が他の町に引っ越しちゃってさ、それで疎遠だったんだわ」
「…なるほど……」
納得した様子の夏樹に來夢は安堵の溜め息をつく。
──入学式が終わったら、この設定で行くことを澪亜に言わないとな──
そう思いながら來夢は自分の席につき一眠りしようと机に突っ伏する。
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