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「笠原君を呼んで頂戴!」
いの一番に放課後の教室へと駆け込んできたのは、隣のクラスの高松亜里砂(たかまつありさ)さんだ。此処、超能力専門高等学校における成績首位の優等生。そんな彼女が俺に何の用だろうか。
「笠原君、そこに居たのね。ちょっと顔貸して!」
転校したての頃に色々面倒を見てもらったが、こんなにご立腹な高松さんは初めてだ。
「だけどこれから遊びに行く約束があって……」
「天才たる私の誘いと一度の遊び、どちらが大事だと?!」
取り付く島も無さそうだ。
俺はそんな勢いに押され、促されるまま校舎裏の桜の木の下へと連れ出されたのだった。
さて、無事目的地に着いた訳だが。
一体何だと言うのか。未だ俺には彼女の心の内が分からない。まさか此処で痛めつけようと言うのか。
「勘違いしないで頂戴!これはあくまで予行練習なの。本番はまた別!」
つまりどういうことなんだ。
と、高松さんは俺に手紙を差し出した。……え、手紙?
「皆の前だと緊張して渡せないから……この桜の下で告白しようと思ったの。貴方が好きです。付き合って下さい」
「い、良いんですか俺で?!劣等生ですよ!」
「余計なことはどうでもいいので!」
「でも高松さん!」
途端、高松さんは差し出した手紙を引っ込めてにっこり笑う。
「はい、私の勝ちね」
「……あ」
んがついてしまったあああ!
「動揺を誘う作戦だったけど、笠原君ってば単純なんだから」
楽しそうに笑う彼女に悔しさと諦めと、残念さが残る。そうか、作戦だったのか。手紙なんて小道具まで出して、見事に引っ掛かってしまった。
それだけじゃない。この会話しりとり、俺が発言だけでゲームを進めていのに対して、この高松さんは俺の心中まで読んで言葉を返してきていた。
全く、しりとりも超能力者としても負けだなんて、笑い者もいいところだ。
二人で一緒に校舎の中へ戻る。
「ああ、そうそう」
高松さんが振り返った。
「好きなのは本当のことだからね」
ああ、一度の勝負で三敗だ。
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