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ひかるのレゾンデトル
厚底を履くようになって遠ざかっていた青葉城址に来た。地震で少し傾いた伊達政宗像に、地下での出来事が過る。
「ひかるちゃん」
先に来ていた真珠ちゃんがひかるに気付いた。ZARAのシャツワンピがよく似合うが、それよりも横にいる似たテイストの服の男性が気になる。
「真珠ちゃん。その人が?」
「そう。彼氏のユウト」
ひかるがやや引き気味に「どうも」と挨拶すると、男の人が「あ、違います」と否定した。某お笑いコンビの細い人に似てる。
「あははっ。実はこの人もモンゲー」
「え?」
「ひかるちゃんの目でまた探してほしいんだけど、協力してくれる?」
あの後、何事もなく公園に戻り、次の日にひかるの右目で大学に来た藤谷さんを見ても、ウサギの顔は見えなかった。話しかけたら初対面のリアクションをされ、あれが本当に起きたことなのかよく分からなくなっていた。
「ひかる、まだ理解してないんだけど。モンゲーって岡山の方言と関係ある?」
「ないない。私も真実を探してる最中。ただ、何もせず放置したら悪い影響が出るのはわかる」
「……地震とか?」
「そう。新米は見つけるの大変で、ひかるちゃんみたいな人がいてくれるとすごく助かるの」
「でも……」
地下での体験はワクワクもしたけど、9割が恐怖だった。またあんな目に遭うのかと思うと膝が震える。
「ひかるちゃんにしかできないとこなの。お願い!また協力して」
ナチュラルにあざとかわいいができる真珠ちゃんの潤んだ瞳で迫られると、断りにくい。
プラス、一度踏み込んだ以上、あの世界の正体を知りたい気持ちもある。
「なら、もう少し歩きやすい厚底に履き替えないと…」
「やた!ありがとー」
真珠ちゃんがひかるに抱きついて、男の人が「ども」と下げた。
またあの世界に行くなら、今度はもっと準備しないと。
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