サンペジのベル

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 ベルの音は、いつの間にか止んでいた。  村人は全員、無事だった。  けれど、その輪の中にサンペジがいない。  そこに、サンペジのトナカイ、スリページが姿を現す。 「ベルよ! サンペジのベル!」  サンリーンはスリページに駆け寄ると、角に引っかかっているベルを外して手に取った。  でも、音がしない。  サンリーンはベルを振った。何度も何度も。  でも、やっぱり音がしない。  いつもおとなしいスリページは落ち着きがなくウロウロしていた。時折、山の方を振り返る。 「サンペジに何かあったんだ。トナカイ達を案内してくれ、スリープ!」  サンスケの声に、スリページがトーンと地面を蹴って走り出した。  たくさんのトナカイ達も、スリページの後を追って一斉に走り出す。  皆、あんなに速く走るスリページを見るのは初めてだった。  しばらくして、サンリーンの持つベルが小さくリンと鳴った。 「帰ってきたぞ!」  ぞろぞろとトナカイたち、それから最後に、サンペジを乗せたスリページが現れる。 「大丈夫か! サンペジ!」  サンスケが一番に駆け寄る。 「ごめん、途中、スリープから落ちちゃって、雪崩に半分うまっちゃってさ。ベルをスリープに預けたんだ。気を失っていたら、トナカイ達が助けに来てくれてね。みんな無事だったんだね。よかった」 「ばか! 人のこと心配してる場合じゃないでしょ」  涙目のサンリーンは怒りながら、サンペジにベルを返す。  いつの間にか、太陽は金色に戻っていた。  サンペジの手の中で、ベルもゆっくりと元の金色に戻っていく。  その時、村人達から声が上がった。 「サンペジ、バンザイ!」 「平和のベル、バンザイ!」  その日からサンペジは、ベルが鳴っても笑われることはなくなった。  サンペジは、飛んだり跳ねたり、思いっきり遊んでいる。  スリページは相変わらず、サンペジのそばで昼寝をしていた。    リーン リーン  サンペジのベルが鳴り響くサンタ村は、今日も平和である。            ーおしまいー
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