サンペジのベル

1/3
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 サンペジは今日、十歳になった。  待ちに待った十歳。  ここ、サンタ村では、十歳の誕生日にアイテムがプレゼントされる。北にそびえる山の麓に立つ、大きなクリスマスツリーの根元に、プレゼントが用意されているんだ。  サンスケのアイテムは、金平糖だった。  道しるべの金平糖で、一粒投げるとプレゼントを配る家まで飛んで教えてくれるという、サンタの仕事には便利なアイテムだ。  サンリーンのアイテムは、傘だった。  それは天気を教える傘で、プレゼントの準備にとても役立つ。  配達の時は傘の知らせに従えば、吹雪を避けて進むことだってできる。  サンペジは同級生たちの中でも一番誕生日が遅くて、どんなアイテムだろうとみんな楽しみにしていた。  サンペジの誕生日、クリスマスツリーの根元にあったのは、ベルだった。  持ち手に紐がついていて、首にかけられるようになっている、太陽と同じ金色のベル。  ベルなんて、一番ありきたりだ。  しかも、サンタというよりトナカイの装飾品じゃないか。 「サンペジにぴったりだな」 「ほんと、お似合いだよ」  いつも七、八歳に間違われるほど小柄なサンペジがベルを手にした姿を見て、みんなは笑った。  そして、村に伝わる童歌(わらべうた)を歌って囃し立てた。  紫色の太陽の下♪  平和のベルを鳴らせ♪  傘が教えてくれる♪  金平糖は道しるべ♪ 「平和のベルを鳴らせ〜だって」 「はははっ、ベルを鳴らしても何にも起こらないのによ」  皆の言うとおりで、サンペジがベルを鳴らしても特に何も起こらなかった。  それなのに、そんなに大きくないベルの音は、村の隅々にまで響きわたる。  しかも、サンペジが動いて揺れる度にリーンと鳴るのだ。恥ずかしいったらありゃしない。  サンペジは、相棒のトナカイ、スリページの首を撫でた。よく眠るので、通称スリープと呼んでいる。  「スリープ、おまえにやるよ」  サンペジはスリページの首にベルをかけようとして、サンタ村の長老に止められた。 「本人が持っていなければならないぞ。肌身離さずな」  サンペジは仕方なくベルを首にかけ、その時にまたベルがリンと鳴って、皆はまた笑った。  相棒スリページはそんなことはお構いなしで、またサンペジのそばで目を閉じた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!