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「っあ……」
天蓋付きのベッド、やたらと明るい間接照明。俺の上に覆い被さっているオールバックの男は、俺を見下ろして面白がるような不敵な笑みを浮かべている。
「どうした? 演技だったらしなくていいぜ? 俺はそんなもん無くたって充分楽しめるからな」
何ということもない、挿入の前の前戯――のはずだ。
「そっ、それ、何か変なもんでも入ってんじゃねぇの?」
「は? お前も見たろ。ゴムに付いてる普通のローションだろーが」
男はベッドの上に転がっている箱を取って俺に見せた。「XL」というのは初めて見た気がするが、何度か目にしたことがあるゴムのメーカーのパッケージだ。付属のローションも使ったことはあるし、特別可笑しな点はなかった。
「まさか、感じてるんじゃねーよな?」
「ひぁっ」
俺の中を掻き回すように動いていた指が、確実に「そこ」を目掛けて刺激をする。俺は不意に出た声に動揺し、慌てて口を手で塞いだ。
バイト先のバーから真っ直ぐホテルに来て、その間に男との飲食はしていないし、薬を盛られた可能性もない。だとしたら──
──いや、そんなはずはない。前戯なんて、何十人と何十回も経験してきた。気持ち悪いだけの、挿入前に仕方なくやる行為でしかない。
「口塞ぐなよ。感じないんだろ? なあ」
「あっ……は、離せ──ッあ……!」
口を覆っていた手と抵抗しようとしたもう一方の手も頭の上に纏められて押さえつけられる。
最初腹側を押すように指が動いた瞬間、くすぐったいような、むず痒さのようなものを感じた。それが今は全身がぞくぞくするような、茎を扱くのとは全く異なる刺激を感じるようになっている。
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