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「香川さん、今朝、虹が出ているの見ました?」
七宮は、話題を変えた。
「えっ? あ、ああ……椋平虹のこと?」
「なーんだ、あれが椋平虹だって、知っていたんですね。さすが、副クラス委員長ですね。じゃあ、あの虹の意味も知ってますよね?」
「え……、あ、ああ。まあ、そうね……」
九十年以上も前、椋平という人が、短冊状の虹を観察して、地震との関係性を見出し、大地震が起こる前にそれを予知したという伝説。
椋平が関東大震災や北伊豆地震などを予言して、見事、的中させたというので、短冊状に出るその虹のことを、いつしか椋平虹と呼ぶようになったという。
「不吉ですよね、何が起こるんでしょうね。フフフ」
七宮は、顔をくしゃりとさせて、笑った。
「ちょい、ちょい。七宮、その言い方、不幸を願ってるみたいで不謹慎やない? まるで、大地震がくることを楽しみにしてるみたいやん」
「大地震? 地震が起こることなんて、願ってないですよ、別に」
「は? 今、ワクワクしてたやん? 椋平虹見たからって」
何人もの生徒が、亜衣たちの横をすり抜けて、階段を上っていった。
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