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「あ、来た来た。亜衣、おはよう。やっと現れたか」
教室から出てきた新町咲は、いかにも、待ちわびていたという顔をして、亜衣に近づいてくる。
「ねぇ、ねぇ、物理の宿題やった? ちょっと、教えて欲しいところがあんねんけど、今からいい?」
まるで、七宮のことが見えていないかのように、咲は二人の間に割り込み、亜衣の腕を掴んだ。
「えっ、ちょっ、ちょっと……」
亜衣は、やや強引に、教室の中に引っ張りこまれる。亜衣を掴んだまま、ズカズカと後方に向かう咲。
「亜衣、委員長会議の時は、仕方ないけど、普段は、七宮とあんまし口をきかない方がいいよ」
「えっ?」
「知ってるでしょ? 七宮は、バカマジメで嫌われて、一年の時は孤立してたんだから。一緒にいたら、亜衣までとばっちりを受けるよ」
咲の顔は真剣そのものだった。本当に亜衣のことを心配しているらしい。
亜衣と咲は、ソフトボール部でバッテリーを組んでいて、一年の時から仲が良かったが、友達認定の基準は、ちょっと違っている。
どちらかというと、咲の方が、普通のJKで、亜衣の方が少し変わっていた。
教室の入口を振り返ると、七宮が仏頂面をして入ってきた。そして、そのまま、最前列の自分の席に座る。
そして、七宮は、机に突っ伏した。
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