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担任の都合で、帰りのホームルームは無くなった。
「亜衣、部活行こうよ」
「う、うん、ちょ、ちょっと待って」
亜衣は、教科書、ノート、プリントを乱雑にリュックに詰める。弁当箱に引っかかっているのか、上手く押し込めずに、プリントが一枚、ひらりと落ちた。
「慌て過ぎー。ほら、落ちたよ」
咲は、床に落ちたプリントを拾い上げる。
「あれ、こんなプリント、授業で配られたっけ?」
「あ、あぁ、それね」
咲の手にした用紙には、『ご協力のお願い――各組に不登校の生徒がいる場合、クラス委員が率先して連絡を取り、心のケアをしてもらえるようお願いします』と印刷されている。
「今朝のクラス委員会議で、配られた資料だよ。あんまり、関係ないから捨てよっかなー」
亜衣が咲からプリントを取ろうとしたら、咲は、サッと避けた。
「いやいや、亜衣、関係無くないでしょ」
亜衣は、頭にハテナマークをいくつも浮かべ、咲を見返す。
「うちのクラスにもいるやん、不登校児が一人。ひょっとして、忘れてる? 副クラス委員長さん」
「……。えっ? 誰かいたっけ?」
「ほら、そこの席の、北野よ、キタノ」
北野敦。
北野は、一年の時に、クラスで作ったチャットルームでいじめられて、不登校になった。二年生になってからは、一度も学校に来たことが無い。
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