1.平凡ではない日常のはじまり

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 担任の都合で、帰りのホームルームは無くなった。 「亜衣、部活行こうよ」 「う、うん、ちょ、ちょっと待って」  亜衣は、教科書、ノート、プリントを乱雑にリュックに詰める。弁当箱に引っかかっているのか、上手く押し込めずに、プリントが一枚、ひらりと落ちた。 「慌て過ぎー。ほら、落ちたよ」  咲は、床に落ちたプリントを拾い上げる。 「あれ、こんなプリント、授業で配られたっけ?」 「あ、あぁ、それね」  咲の手にした用紙には、『ご協力のお願い――各組に不登校の生徒がいる場合、クラス委員が率先して連絡を取り、心のケアをしてもらえるようお願いします』と印刷されている。 「今朝のクラス委員会議で、配られた資料だよ。あんまり、関係ないから捨てよっかなー」  亜衣が咲からプリントを取ろうとしたら、咲は、サッと避けた。 「いやいや、亜衣、関係無くないでしょ」  亜衣は、頭にハテナマークをいくつも浮かべ、咲を見返す。 「うちのクラスにもいるやん、不登校児が一人。ひょっとして、忘れてる? 副クラス委員長さん」 「……。えっ? 誰かいたっけ?」 「ほら、そこの席の、北野よ、キタノ」  北野(あつし)。  北野は、一年の時に、クラスで作ったチャットルームでいじめられて、不登校になった。二年生になってからは、一度も学校に来たことが無い。
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