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「福の神しか入って来られなくなるんだ。だから、これから我が家は、どんどん幸せになるはずだよ。楽しみだね、亜衣ちゃん」
亜衣の父は、そんなことも言っていたけど、それから、三年も経たないうちに、言った本人が、この世からいなくなっちゃった。だから、亜衣は、こんなお札が効くとは思っていない。
(なんか、汚れてるし)
亜衣は、どこかに捨ててしまおうと、魔除けのお札を二つに折って、ブレザーのポケットに押し込んだ。
「亜衣ちゃん、何してるん、慌てすぎやって。家、壊さんといてや」
振り返ると、心配そうな顔をした母がリビングから出てきた。
「ご、ごめん、ごめん。ちょ、ちょっと、遅刻しそうやから……」
亜衣は、ドアを引いて、U字ロックを外す。
「遅刻? 大丈夫やろ? いつもと一緒の時間やないの?」
「今日は、早朝会議があるの!」
「会議? 高校生やのに、朝から会議なんてあるん?」
「あるの! クラス委員長会議が!」
亜衣は、京四条高校の二年C組で、副クラス委員長をしていた。自ら手を挙げて立候補したのは、元々活発な性格だったこともあるけど。
それよりも、気になる男子が、先にクラス委員長に決まっていたからっていう方が大きい。
そう、今日もその彼と、朝から会議に出席する予定だったんだけど。
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