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コンコン、コン……コッコッコン。
(な、たんだよ……。まだ、諦めずに、いんのかよ……)
飯塚は、しぶとい七宮を追い返そうと、意思を固めて、勢いよく扉を開けた。
「よっ、斗基ちゃん、久しぶり。一緒に帰らへん?」
新町咲が、立っていた。目尻を垂らして、笑っている。
飯塚は、意外な幼馴染の出現に一瞬、言葉を失った。
「お……おぅ、ひ、久しぶりやな」
なんとか、それだけを言う。
飯塚と咲は、家が近所で、幼稚園からずっと一緒という、腐れ縁である。それでも、咲は、女子。どんな噂を流されるか分からないので、飯塚は咲にすら、本性を見せたことが無い。
闇の心――『ダークトキちゃん』をむき出しにして、荒くれモードだった飯塚は、普段の自分に戻そうと、頭の中で、なんども『エンジェルトキちゃん』を呼び続ける。
次に出す言葉を探したが、なかなか見つからず、前髪を触る。
「前髪、気にし過ぎやって、斗基ちゃん。すっかり、色気好きよってからに。ふふふ」
咲が、また笑った。
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