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くるっとカールされた巻き髪から、フレグランスの良い香りがした。
ポッ。
飯塚は最近、これまで全く恋愛対象にしていなかった咲を見る目が変わってきている。
そんなはずは無い、と、飯塚の中のエンジェルトキちゃんに問いかけたことも多々あったけど、本心は否めない。
「咲、今日は、部活は無いん?」
飯塚は、心の動きを悟られないように気をつけながら、ノートパソコンをシャットダウンし、帰り支度をする。
「ソフトボール部、地区予選が近いんとちゃうん?」
「外見てみ? めっちゃ、雨よ。グランドもベチャベチャやし、今日は、練習無くなってん」
窓の外は、バケツをひっくり返したような、土砂降りだった。
「……ほ、ホンマや……たしかに」
校門へと続くコンクリートの上は、川のようになっている。傘も役に立たなさそうで、誰も歩いていない。
そんなゲリラ豪雨の中、校門の向こうから、校内に入ってくる黒い影があった。
飯塚は、好奇心から、それを目で追う。
「な、なんや、あれ?」
傘もささないで、のそのそと歩いてくるのは、スマートフォンのようだった。
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