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「え、何? どうしたん、斗基ちゃん?」
窓際で、声を失い、そいつから、目が離せなくなっている飯塚の横に、咲が並ぶ。
「な、なに、あれ?」
咲もそれを見つけたのか、息を飲むように、手で口を覆った。
手と足の生えた巨大なスマートフォンは、何かを探しているのか、キョロキョロしながら、こちらに向かってくる。
そして、生徒会室の窓の真正面に立つと、ピタリと止まった。
「きゃっ、まぶっ!」
スマートフォンのバケモノが、強烈な光を放った。
フラッシュのような閃光だった。
ゴトゴトゴトゴトゴト……。
「きゃっ、な、なんなん!?」
背後の扉が、激しく揺れていた。
「な、なんなんや、コレ……」
飯塚は、目の前で今、何が起きたのか、理解できない。
それをあざ笑うかのように、黒々としたスマートフォンは、小刻みに揺れた。
そして、上下に体を揺らしたまま反転し、校門の方へと歩きだした。
川のようになって流れる雨水。
その中を行くスマートフォンは、大雨がカーテンのようになって見えなくなった。
飯塚は、ゆっくりと咲の方に向く。
「き、着ぐるみやんな、今の……」
「そ、そりゃ、そうに決まってるやん……。そうとしか考えられへんし……」
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