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久しぶりの咲との下校は、幸先が悪い。
(なんやったんや、あれ……)
傘をさして最寄りのバス停に向かう間、さっきの出来事が、何度も頭の中でフラッシュバックした。
スマートフォンの造形は、やけにリアルだった。
そこから生えた腕は、流木のように筋張っていて、手先はトカゲのようで……。
あれが人工物だとしなら、ハリウッド映画の特殊メイク並の技術だったのではないのか。
「なあ、斗基ちゃん、さっきのこと思い出しとるん? もう、ええやんか、忘れようや。趣味の悪い、いたずらやって」
前を歩く咲が、振り返って言った。
確かに、スマホの被り物をして、ただフラッシュを焚いただけなら、いたずらの可能性はある。でも、あの時、背後の扉が揺れたのはなぜか。特殊な光線ではなかったのか。
飯塚は、そんな不安にかられたが、久しぶりで、せっかくの咲との下校を楽しもうと、気を取り直す。
「そ、そうやんな……。だとしたら、学校の警備はあかんな。あんな不審者が、簡単に入ってこれるなんて……」
「あぁっ! そうそう」
咲は、何かを思い出したのか、声を張り上げた。
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