3.正義の生徒会長

12/26
前へ
/131ページ
次へ
 久しぶりの咲との下校は、幸先が悪い。 (なんやったんや、あれ……)  傘をさして最寄りのバス停に向かう間、さっきの出来事が、何度も頭の中でフラッシュバックした。  スマートフォンの造形は、やけにリアルだった。  そこから生えた腕は、流木のように筋張っていて、手先はトカゲのようで……。  あれが人工物だとしなら、ハリウッド映画の特殊メイク並の技術だったのではないのか。 「なあ、斗基(とき)ちゃん、さっきのこと思い出しとるん? もう、ええやんか、忘れようや。趣味の悪い、いたずらやって」  前を歩く咲が、振り返って言った。  確かに、スマホの被り物をして、ただフラッシュを焚いただけなら、いたずらの可能性はある。でも、あの時、背後の扉が揺れたのはなぜか。特殊な光線ではなかったのか。  飯塚は、そんな不安にかられたが、久しぶりで、せっかくの咲との下校を楽しもうと、気を取り直す。 「そ、そうやんな……。だとしたら、学校の警備はあかんな。あんな不審者が、簡単に入ってこれるなんて……」 「あぁっ! そうそう」  咲は、何かを思い出したのか、声を張り上げた。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加