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(き、着ぐるみ!? 通信キャリアのイベント? こんな朝から?)
スマートフォンの形をした上半身が、僅かに傾き、両手を前に挙げ、爪を立てる。流木のようにこげ茶色をして、筋張っている手首の先に、どす黒くて鋭い爪が伸びた爬虫類のような手。
(イヤイヤ、近くに携帯ショップなんてないし)
亜衣は、激しく高鳴る胸に手を当てて、気持ちを落ち着かせる。
「ガ……ガルルルルッル……」
ケダモノのようなだみ声が、着ぐるみの中からした。
「げっ!」
亜衣は、少し腰を落として、身構える。
(や、やばい……コ、コイツ、本物の変質者かもしれない)
「ガオゥッ!」
「きゃっ」
腕を掴まれかけた亜衣は、咄嗟にそれを振り払い、スマートフォンのわきの下をすり抜ける。
「ガッガアァルルッ!」
亜衣は、捕まるまいと、地面を蹴り上げて、超絶にダッシュ――と見せかけて、真上に飛んだ。
「オゥッ!?」
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