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飯塚が説明を求めると、香川亜衣は、眉をひそめ、すわったような目をして語り出した。
「ハーメルンの笛吹き男という童話は、知ってます?」
「な、なんとなく……。男が笛を吹いて、村中の子供を連れ出して、洞窟に隠したっていう話やなかったっけ?」
「さすがは生徒会長。だいたい合ってます」
「それが、どう関係あるん?」
「それと同じことが、昔、鴨川流域の街でも起こったんです。わたしが小学校に入学してすぐ」
「え?」
「わたしの通っていた小学校で、次々に児童がいなくなったの。どこかの男が連れ去ったって、騒ぎになったわ。警察も動いたんやけど、捜査も空しく……」
「こ、殺されてもたん?」
「ううん。殺されてはいない……。ただ、みんな、姿を妖怪や怪人に、変えられてしまったの……」
「マ、マ、マジで!?」
「マジで。当時のマスコミは、童話にあやかって、捕まらない犯人を『鴨川の笛吹き男』って呼んだみたいよ」
泣き疲れたのか、ようやく咲が顔を上げた。
飯塚は、咲と目が合った。
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