1.平凡ではない日常のはじまり

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 ドーン!  初代タイガーマスクばりの、綺麗なローリングソバットがクリーンヒットして、スマートフォンを被ったヘンタイは、数メートル先に吹っ飛んだ。 「な、なんなのよっ! もう」  亜衣の格闘技オタクが役に立った。資料映像でしか見たことが無かったけど、初代タイガーのソバットは実戦で使える気がしていた。 「ガルル……グルルルルルリゥイ……」  うめき声が、どんどん遠のく。どうやら追いかけてきてはいないらしい。 「ふざけないでよね!」  走りながら後ろを見ると、変態スマートフォン人間は、右手をこちらに突き出し、待ってと言わんばかりの形で固まっている。 「キ、キモすぎるんだって、この、どヘンタイ!」 「キ、キタノ……」  苦しそうなスマートフォンから、そんなだみ声が聴こえてきたけど、亜衣は走るのを止めることなく、ただただ、憤慨した。 「は? わたし、キタノって名前じゃないしっ!」  ようやく、公園通りに抜け、歩道の先にバス停を見つけた。ほっとした矢先に、見覚えのあるツートンカラーが視界に入ってくる。 「ま、マジで!? 勘弁してよね、もう」
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