1.平凡ではない日常のはじまり

9/17
前へ
/131ページ
次へ
   ♰  亜衣は、七宮の背中に隠れるようにして、早朝のクラス委員長会議が開かれている教室に入った。  教室は静まりかえっている。十五分も遅れたので、すでに会議は終わりかけているのかもしれない。 「す、すみません。遅くなりましたぁ」  前を歩く七宮が何も言わないで席に着くので、息苦しくなった亜衣が、先に謝った。 「おはよう。二年C組は、二人そろって遅刻? 相変わらず、息ピッタリやねえ。さすがっす」  議長を務める、生徒会長の飯塚斗基(いいづかとき)は、シャーペンをクルクルと回して、笑う。 「すみません。た、たまたまなんですけど、バス停で偶然、会って……。忘れてたわけじゃないんです」 「ハハハ。オレも、別にそういう意味で言ったんやないよ。気にしないで、座って」  教室中、いろんなところから、クスクスと笑い声が漏れる。  亜衣は、顔を火照らせながら、椅子を引いて座った。 「七宮君と香川さんには、申し訳ないけど、もう、詳細な説明は終わってしまったんで、ポイントだけ、簡単に言いますね」  飯塚は、プリントを持って立ち上がる。  教室にいる女子たちがざわついた。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加