Rachelが知っている

1/1
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

Rachelが知っている

「今でも理由を言ってくれれば融通しているでしょう?そんなに頻繁に言われてもダメよ。始終、言われるままに出してあげる訳にはいかないわ。それに……いつか、わたしが死ねば全てあなたのものになるんだから……はっ!あぁぁぁっ……」 * 海山警察署、正面受付 「大館公子さんは、確かに少し精神的に不安定だったけれど、突然姿を消すなんておかしいわ。真剣に探して欲しいの。何かの事件に巻き込まれたのよ!」  女性がカウンター越しに、話を聞きに出た男の署員に泣きそうになりながら話していた。田口増美(50)が海山警察署のこの窓口に来て大館公子(48)の失踪について訴えに来たのはこれで2度目らしかった。 「大館公子さんについては、妹さんからもお話は聞きましたが、何かの事件に巻き込まれたというようなことは無いようでした。家出と言うことで受理はしていますので、それ以上は残念ですが……お友達というあなたの申し出は、何かしら大きな理由でも無い限り」  田口増美の話を聞いていた署員は、申し訳ないが納得して欲しいと言うことを全力で田口増美にアピールして納得してもらい、引き下がって帰ってもらえるよう奮闘していた。  署員と田口増美がそうして話しているところへ奥の廊下から偶然に通りかかった風戸明刑事が口を挟んだ。 「大館公子さんというのは、美しが丘1丁目の家に一人で住んでいた女の方ですか?あの人の行方がわからなくなったんですか?」  風戸刑事は田口増美の前で足を止めて尋ねた。風戸の横でコンビのベテラン刑事山城が、また余計なことに首を突っ込んだという顔をして声を細めて「風戸……」と言いながら、カウンターで田口増美に応対していた署員に『まぁ、許せ』という目線を送った。風戸に話しかけられた田口増美は、救世主でも見るように風戸に向き直り、 「そうなんです。大館公子さんが……」  刑事の方から田口増美に声を掛けたのだから、もう彼女の話を聞かないわけには行かなくなった。それでも今すぐにというわけには行かないので、あとで時間を作って田口増美婦人の家を訪問する約束をした。 * 「大館さんは僕が交番勤務をしていたときに巡回で行ったことがあるんです。……行ったとき、大館さんは旦那さんを亡くされて1ヶ月ほどたっていたところでした。とても不安そうな顔つきでしたね。こちらから質問したわけでもない身の上話なんかをずっと話してくれて。しきりに『寂しくなった』ということを口にしたので、旦那さんを亡くしたショックなのだろうと思って、僕は『ペットでも飼われてみてはどうですか』って、今思うと警察官が関わることではない余計なことを言ってしまったと思ってます。……それで、大館さんの家の近所の訪問も当然したわけですが、その中に田口増美さんもいました。田口さんは僕のことを覚えていないようでしたが。田口さんは大館さんとむかしから親しいようでした」  風戸は車を運転しながら山城に話しながら車の速度を緩めて左側の家を見やった。 「ここが大館さんの家ですね。大きな家ですが、旦那さんが亡くなって公子さん一人で住んでいるんだと話してました」  風戸はそう言うと、「田口さんの家はこの先です」と車の速度を上げた。助手席の山城刑事は、ん~っと小さく呻ってから「ここら辺に家がある人は、それなりに財産を持っているだろうから、失踪したというとなにかありそうだよな」と大館公子の家をまだ見ていた。  風戸、山城の刑事両名が田口増美婦人の家に着いたとき薄暮の時間だった。二人は田口婦人に応接間へ通された。  田口婦人は刑事二人がソファに座り、そこへ待っていたようにお茶を出して自分も椅子に腰を下ろすと語り始めた。 「彼女は旦那さんと二人だったの。子供もいなかった。妹さんがいたけれど、折り合いが悪くて付き合いはほとんど無し……旦那さんが亡くなったときに、まるっきりの天涯孤独のような身になってしまったのよ。それでとても打ちひしがれていた。だからわたしはずいぶん気を遣ってできる限り彼女の気晴らしになるようなことに誘ったの。でも、あまり効果が無かった……。それでしばらくしたころに彼女、猫を飼おうと思うって言って、それでパソコンを使って猫をくれる人を探したんですって。しばらくして明るい茶色と白の毛色の猫をもらってきたの。雄だと言っていたわ。わたしも見せてもらったの。とてもかわいがってた。その猫を世話してくれた方からアドバイスを聞きながら猫の世話をしていたの。そうしたら彼女の表情も明るくなって、良かったと思っていたわ。それでわたし、ちょうどいいと思って、あるパーティーに誘ったの。慈善事業の寄付を募る名目のパーティーだったんだけど……実はそのパーティーで彼女、ある男と出会ったの……」  田口婦人の話に始めはさほど浮かない表情をしていた風戸と山城は、大館婦人が男と出会ったという所で目を見張った。田口婦人も刑事二人の目つきの変化を気取って話しぶりに力が加わった。 「その、出会った男というのは神尾雄一といって、実業家ということだったけど、あまりいい噂の無いプレイボーイで歳も38って聞いたわ。見た目は小綺麗で端整な顔立ちっていうのかしらね……会話も上手で確かに魅力的な男だった。けれど、48歳になる資産家の未亡人に38歳のプレイボーイが近づいたら、誰でもあまりいいことは想像しないでしょう?」  田口婦人が問いかけて言葉を切った。それで風戸刑事は、想像される事態を口にした。 「あなたは止めたけれど、大館さんはその男性に夢中になってしまったんですね?」  田口婦人はやるせない表情で頷いた。 「彼女は彼を本気で愛してると言ったわ。……前の旦那さんが亡くなって1年が過ぎた位だったけれど、彼女にとっては、その間の寂しいという心の痛手が大きな反動を産んだのかもしれなかった。元々がとても寂しがりだったの。それは猫を飼うだけでは埋められなかった。そしてわたしは、よかれと思ってパーティーに誘って、余計なことをしてしまったようだわ……」  田口婦人は自分でそう言いながら気が咎めたのかうつむいた。それについては風戸も当時に自分が大館婦人に言ったことばが切っ掛けで猫を飼い始めたのだろうと言う思いから田口婦人と似たような気持ちに襲われた。 「それで、その後なにか起きたんですか?大館さんの失踪に繋がるような……?」と山城刑事が言った。田口婦人はまた気を取り直して話し始めた。 「わたし、彼女に神尾雄一とのことは良くないって言ったんです……何度か。そうしたら彼女は、好きにさせてと言って、私に会うこととか連絡を避けるようになって。がっかりしました……。けれど彼女、幸せそうだったから良かったのかも。彼女が神尾雄一と出かけるのを見かけたし、パーティーに二人で来ているのも見ましたから。わたし自分だけ馬鹿だったわなんて思っていたら、ある日、神尾雄一から電話が来たんです。彼女がいなくなったと。それで一番親しかったというわたしに連絡してみた、と。彼女の失踪する一ヶ月ほど前からあの男は彼女の家で同居していたらしいんですけれど。何かおかしくありません?彼女の失踪にはあの男が絡んでいるとしか思えません。あの男は自分が彼女を捜しているように見せかけるため、わたしに連絡してきたんですよ、きっと」  田口婦人は、自分が警察に言いたいことは一応言い切ったというようにことばを終えた。 「その、神尾雄一さんという男性が大館さんとの間でお金目当てでトラブルになるかして、大館さんの失踪に繋がったと言いたいんですか?ですが、単純にお金が目当てなら、その男性にとって大館さんがいなくなるのは、むしろ不利益なのではありませんか?大館さんとできる限り『いい関係』を継続していたかったのではないでしょうか?」風戸がそう言うと田口婦人は口を尖らせた。 「でも、絶対にあの男が関係してますわ!」 「お友達を気遣われる気持ちはわかりますが……。ところで、大館さんは猫を飼っていたのですよね?その猫は、どうなっているのでしょう。ご存じですか?」 「猫?猫のことは知りませんわ。そういえばどこへ行ったのかしら……」 「猫も行方不明ですか……」風戸が呟いた。 * 海山警察、美しが丘交番 「お久しぶりです」  風戸はそう言って一人の巡査に会釈をした。 「えへへ。活躍は聞いてるよぉ」と大滝巡査(50)は相好を崩して言った。風戸は顔の前で、イエイエと手を振り呟くように「とんでもないです」と返した。山城刑事は、「ヨッ」と軽く右手を挙げて見せた。 「どうしたの?何かあった?」大滝巡査は不思議そうな顔をした。 「大館公子さんの失踪の件で来たんですが、わかりますか」  風戸がそう言うと大滝は「あ~」と言う顔で頷いた。 「資産家の旦那さんが亡くなって、その後一人暮らしだった夫人の姿が見えなくなったということで、一応は署でも調べたでしょ?でも特に事件を匂わせる様なものは見つからなかったと聞いてます。わたしも一度家の方へ行きましたけれどねえ。公子さんの妹の小野景子さんが正式な届けを出して受理されています。……元々、精神的に不安定だったという妹さんからの話もあって、心配は心配ですが、警察ではそれ以上のことは……と言うことですね」 「大館さんが交際していた神尾雄一という男性は、何も出なかったんですよね?」 「それは署で聞いてもらった方がいいけど~」 「いやぁ、署で聞くと、関係ないことに首突っ込むなって言われちゃうからね。知ってることがあったら、教えてよ」山城が笑った。 「実は、最初に大館公子さんの失踪を届けてきたのは神尾雄一なんですよ。何でも、結婚の約束をするくらいまで行っていたんだと言う話です。ですが大館さん失踪後は、もう無関係ですからねえ。妹の景子さんからも、口出しは無用だ、家にも近づくなと遠ざけられてしまったようです。大館さんとの間に金銭トラブルなんかも無かったようですし」 「なんの前兆も無く失踪、ですか」と風戸。 「前兆というか、おかしなことがあったと言えばあったんです」大滝巡査は少し腑に落ちない様子で話した。 「おぉ、それは?」山城が言った。 「大館さんが失踪する一ヶ月くらい前からでしたが、ピンポンダッシュのイタズラの訴えがありました。ここを大館さんが訪ねてきて、最近昼間に門のチャイムを鳴らされて出て見ると誰もいなくて、門の前に何かゴミとか虫の死骸とかを置いていくという話でした。それがほとんど毎日続いていると。3回ここに来て言われました。怖いからということを言うので、パトロールを強化しますと答えておきました。……ピンポンダッシュは子供のイタズラやあるいは空き巣狙いなどが家人がいるか確かめる為にやったりしますが、ゴミを置いていくというのは珍しいですし、あの周辺ではほかにそういうイタズラをされたという訴えは無かったんです。それが、不思議と言えば言えますねえ」大滝巡査は回想しながら自問自答するように言った。 「大滝さん、大館さんは猫を飼っていたと思われるんですが、大館宅で猫は見ましたか?」風戸がそう言うと大滝巡査は肩をすくめた。 「いいや、家に猫はいなかったよ。猫を飼っていたという話も聞かなかったなぁ」 * 神尾雄一の住むマンション 「大館公子さんとは結婚を考える間柄だったとか」山城刑事は、なかなか椅子に座らずそわそわとした感じの神尾雄一をソファから見上げて言った。 「ええ。彼女はとでも素晴らしい女性でした。僕は彼女のおかげで本当の愛情というものを知りました。恥ずかしくなく声に出して言えます『愛していた』と」 「ほぉ~。『いた』ですか?」山城は頓狂な声で言った。 「いや。間違いです。揚げ足を取らないでもらいたい……、わたしが彼女に何かしたと疑っているんですか?……わたしの周囲の人間はみんなそんな目でわたしを見ている。酷い話だっ!」  神尾は、やっと椅子に腰を下ろすと山城の目を見てそう言った。  刑事二人と神尾雄一はそうしてしばらく話したが、特に疑わしいような部分は無かった。そして風戸が尋ねた。 「神尾さん。大館さんは猫を飼っていたと思うのですがご存じですか?」 「ええ。飼っていました。……薄い茶色と白の毛色をした雑種の猫だと。向かいの家の女性に猫を飼うつもりだと話したら、それなら動物愛護のボランティアで保護した猫を斡旋している人を紹介すると言われて、そこからもらったのだと言っていました。飼い方や細かいことも教えてくれると、喜んでいましたね」 「でも、神尾さんは猫が嫌いだったんですね?それで大館さんは猫を買い続けることを諦めたんじゃありませんか?」風戸が言ったことばに神尾雄一はしばらく硬直していた。 「僕は猫とか動物全般が苦手で、それにアレルギーがあるんです。彼女の家を初めて訪れたときは、本当に困りました。……そうしたら彼女はとても悲しそうな顔をしたんですが、いつも外で逢っているうちに、一緒に暮らしたいという互いの気持ちが高まって、彼女は猫を諦めてくれたんです。もらい受けた相手の人に引き取ってもらえるか事情を話してみると。それでしばらくして、猫を引き取ってもらえたと言って、それから家中を業者に掃除してもらって……僕が彼女の家で一緒に暮らすようになったんです。ですが一ヶ月あまりで彼女は消えてしまった」 * 大館公子宅の向かいに住む豊島婦人(58)の家 「お向かいの大館公子さんが失踪したのはご存じですね?そのことでお話を伺いたいのですが」  玄関に出て来た豊島婦人は快く刑事を応接間に通した。豊島婦人は椅子に座るとすぐに、 「大館さんの猫のことが聞きたいんじゃない?」豊島婦人は嬉しそうに話す。 「よくわかりましたね」風戸が微笑んで見せると豊島婦人はさらに嬉しそうにした。 「あの猫、Rachel(レイチェル)って、大館さん名前を付けていたの。まだこの辺りにいるわ。ときどき見かけるの」 「大館さんは、猫を飼えない事情が出来たので譲ってくれた相手に再度引き取ってもらったと言う話でしたが」風戸が言った。 「そうなのよ。彼女、わたしの所に来て『せっかく紹介してもらったのに』って、謝りに来たのよ……それが、返した先からすぐ脱走して、大館さんのところへ戻って来ちゃった見たいねえ。結構遠いのに、よく戻ってきたわ」 「その、レイチェルが戻ってきていることを大館さんには教えなかったんですか?」 「ううん……大館さん、ちょっと感じやすい性格だから、だからそんなこと教えたら、また動揺してしまうんじゃないかと思って、わたし言わずに黙っていたの。脱走した相手のボランティアの人には伝えたわ。なかなかこっちの方まで手が回らない、ってぼやいていたわ」 「なるほど、そうでしたか……、それで、レイチェルなんですが、ここに戻ってきてからの様子をお宅からご覧になっていたんですよね?そのときのレイチェルがどんな風だったか教えていただけますか?」 「ええいいわ。とっても面白いの!」 *  数日後、深夜の大館宅の広い庭の片隅に現れた大館公子の妹夫婦、小野景子と洋司の二人が、張り込んでいた風戸山城の2刑事に捕らえられた。  妹の景子は、「身内の家に入っただけで何が悪い」と言ったが、それは通用しなかった。 海山警察署、取調室 「あなたたちがいたあの場所の土を掘り返すと大館公子さんの遺体が出てくる。今、掘っていますよ」  風戸明刑事は小さなデスクを挟んで小野景子と対峙していた。 「あなたは、お姉さんの公子さんが妬ましかった。そのお金がと言うべきでしょうか?……そして公子さんの夫忠男さんが病気で亡くなった。あなたがた姉妹にはほかに血縁者がいない。公子さんがいなくなれば遺産はあなたのもの。大チャンスだ。ところが公子さんが神尾雄一さんと結婚すると言い出し、一緒にあの家で暮らすようになってしまった。とんだ邪魔が入ってしまった。二人が結婚する前に、どうにかしなければ……。そこで公子さんを殺害して、その罪を神尾さんに被せてしまおうと考えた。神尾さんの持ち物を事前にくすねておき、犯行に及んだ。あとはタイミングを見計らって神尾さんに公子さん殺害の罪をなすりつけるだけだ……」  風戸の説明に小野景子はふてくされた顔をした。 「何の証拠も無いでしょう?」 「庭のあの場所には、花がいくつも置いてあったのを見たでしょう?……あそこに大館公子さんが埋まっているのを誰かが知っていた。誰かが花を置いていた」 「花を置いていたのは神尾雄一でしょ。姉さんを殺して、その罪の意識にさいなまれて花を供えていたんじゃ無い?」と、得意げに小野景子は言った。 「あなた、公子さんを埋めたあの場所に花を置いているのは神尾雄一さんだと勘違いしているんでしょう?神尾さんが真犯人であるあなたたちに『わかっているぞ』とアピールしているんだと勘違いした。それで彼に金を渡して口止めしようと、あの場所で神尾さんと会う約束をした。そうしておいて、そのうちに神尾さんも亡き者にしようと考えていたんですか……でも、神尾さんは、そんなこと何も知らないんですよ。あなたたち夫婦がやったことに何も気づいていなかったんです。でも、おそらくあなたたちは大きな勘違いをしたまま神尾さんに接触してくるのではないかと、わたしは思いました。それで神尾さんに協力してもらって、あなたたちが接触してくるのを待ったんです。あなたが神尾さんに電話して来た会話も録音されています。そしてあなたたちは約束どおりに、あの時間あの場所で落ち合ったわけです。もう逃げ道は無いんですよ」 * 「……そういう習性があるんだそうです。猫が家の外を歩き回ったあとなんかに飼い主に何か持ってきてくれるのを『猫のおみやげ』とか呼ぶんだとか」風戸は山城が買った自動販売機のコーヒーを受け取って一口飲んだ。 「へぇ。おみやげ、か。なんかそんな話は聞いたことがあるなぁ」山城もコーヒーを飲んだ。 「大館公子さんは、僕が巡回で訪問したときに勧めたことを実行してレイチェルを飼い始めた。けれどその後に神尾雄一さんと出会い、結婚を考える。神尾さんは猫が苦手だったので大館さんはしかたなく猫をもらった先へまた返しに行った。けれどその猫レイチェルは健気に大館さんのところへ戻ってきた。そして家にたどり着いたけれど、レイチェルは自分が家の中では歓迎されないことを感じ取っていたんでしょう。そして大館宅の門のチャイムを鳴らすことを何かの拍子に身につけた。その後、毎日のようにレイチェルは大館宅を訪れ、公子さんのために自分がどこかから持ってきた『おみやげ』を門柱の所においてチャイムを鳴らすとすぐに去っていたんです。大館さんはチャイムが鳴ってすぐに外を見ても誰もいない。猫を飼うのが初めてだったから『おみやげ』なんてわからなかった。門の所まで見に行くと葉っぱだとか花だとか虫の死骸とか、そんなものが置かれているのを気味悪く思った。そこら辺の事情は向かいの豊島さんが何度か目にして知っていた。……しばらくして大館公子さんは小野夫婦に殺害されて庭の隅に埋められた。レイチェルは、そのことも鋭敏に感じ取って、その場所に毎日どこかから花を咥えて置いていった。大館さんが埋められた場所はいつか、花の山になり、小野夫婦はそれを人の仕業と思った。神尾さんが強請ってきたのだと思い込んでしまったんです」  大館公子さん失踪事件は殺人事件になり、そして解決した。  猫のレイチェルはその後、元の動物愛護団体に引き取られたと言うことだ。 おわり
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!