🦸‍♀️1話 White bird🦸‍♀️

5/23
前へ
/117ページ
次へ
 緑色の背景に某大型ショップ店のような丸々しい文字は黄色。社名だけ読んでもここが芸能事務所とは思えないだろう。 【カメレオン事務所】 「子供ながらにわかるのよね。そういう空気って」  メイク室でメイク愛好家でタレントのヒロコに化粧をしてもらっている私。彼女はカメレオン事務所の看板タレント。歯に衣着せぬ発言と、明るいギャップが世の中に受けている。『変われるわ』が名言になっている。 「ですよね」  鏡越しに映るヒロコは黄色いワンピースに高いヒールを履いている。髪はウィッグで、金色のショートボブ。 「幼馴染みくんは、エマが想いを寄せているのは気づいてるの?」  プルプルの唇はヒアルロン酸入りのプロデュースリップ。付け睫は3枚重ねて盛り盛りと笑いを誘う流れもヒロコ流。 「気づいてませんねぇ。うるさい妹が定位置になっているような」  ヒロコはあらまぁと片手を口に添える。ネイルもピカピカなラメが散りばめられている。カラーコンタクトを装着している私を見て、ヒロコは声をひそめる。 「知ってもらえるチャンス。鈍感くんは押しには弱いのよ」  恋多きヒロコは女装家で恋愛対象は男性。ジェンダーフリーで幅広い分野のタレントたちが多くいる。 「だといいんですけど」  鏡で黒いボブウィッグを着けて、微調整する。スーツが似合うキャリアに見えるだろうか?椅子を半回転し立ち上がる。 「叶えられなかったら、やけ酒やけ食い付き合うわよぉ~ガンバっ!!」  ヒロコが言うと前向きになれる。化粧で変わっているからかな? 「ありがとう。ヒロコさん」  一生の友達を作るなら、さばさばして明るいヒロコのような人だろう。私も彼女のようにさっぱりとした人になれたらいいな。
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加