第一章 『混沌の大地』

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第一章 『混沌の大地』

そこに希望はない そこに夢もない あるのは荒涼とした大地と ひとをあくまで阻む魔の森 その大地すべてが悪意をはらみ 魔の跋扈と喧噪をうながす か弱き人はこの大地をオルガディアと呼び 恐れた    ―エデン述記第一章 荒涼とした大地…そして人はそこに住まざるを得なかった。みずみずしく茂った森は魔物に侵され、海は腐り、川は干上がっている。わずかに点在する耕作地をめぐり、人々は争い、殺しあった。そうするなかでやがて集落が寄せ集まり出し、国となった。しかしそれは新たな支配を生み、殺し合いはさらに拡大していく。 それとは別に、どの国にも属さないで、この荒涼とした大地に住む人たちもいた。しかしその生活は過酷で悲惨だった。人は人だけではなく、バグと呼ばれる生物やあるいは魔物と戦わなくてはならなかったからだ。彼らは自らをバリアントと呼び、武と知を誇り、そして理不尽なものすべてを悪と呼び憎んだ。そうして長い年月、彼らはこの不毛の大地に生き、そして果てて行った。だがそうしたなか、バリアントのなかにこの荒涼とした大地からの恵みを得るものが出始めた。 あるものは地に水を湧きださせ、あるものは風を起こし、あるものは火を操った。何千年ものあいだ、この不毛の大地に眠る力の根源に触れ続けた彼らは、身体の奥底にこの大地に生きるための能力を芽生えさせていたのだ。彼らはそれをオルテガルと呼び、とくにその力の強い者を貴んだ。辺境にあってその力を得たものこそ、希望のない大地オルガディアにあって唯一の希望の光となった。
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