6人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
お父さんがサヨちゃんに嫌われてるのはただ単に相性の問題なのかもしれません……ですが、サヨちゃんが来てからというもの、そんな常識では説明のつかないような、どうにもおかしな出来事が家の中で起こるようになりました。
夜、リビングでテレビを見ていたり、自分の部屋で寛いでいたりすると、突然、ガリガリ、ガリガリ…と壁の中から何かを引っ掻くような音が聞こえてきたり、天井からもギィ、ギィ…と、まるで誰かが忍足で歩いてでもいるかのような、天井板の軋む音が聞こえくるんです。
まあ、最初はサヨちゃんも来たことだし、突然の猫の登場にネズミでも騒いでいるのかな? と思ったそうなんですが、それにしてはずいぶんと頻繁に音がするんですよ。
それに、気のせいなのかもしれないですけど、家の中に目に見えない何かがいるような、そんな気配も感じるようになったんですね。
一人でテレビを見ている時、後のダイニングに誰か来たような気配がしたので、お父さんかお母さんが冷蔵庫でも漁りにきたのかな? と振り返ってみても誰もいない……。
また、お風呂に入っている時なんですが、浴室と脱衣所を仕切る曇りガラスに、ぼんやりと人の影のようなものが映ったんで、ナベさん、声をかけてみたんですね。
「父さん? ……母さんなの? なんか用?」
でも、返事がないんです。それなりに大きな声を出してるんで、聞こえてないなんてことはまずありえない……。
いや、それよりも、お父さんかお母さんが何か用事があって入って来たんなら、またすぐに出ていくなり、あちこち移動するなり、何がしかの動きがなくちゃおかしいですよね? でも、その影はそこに突っ立ったまま、身動き一つしようとはしないんです。
いったいなんなんだろう? これまでに感じた気配のこともあり、恐ろしい気持ちも少なからずあったんですが、ナベさん、湯船を出て、曇りガラスに手をかけると思い切って開いてみたんですね。
最初のコメントを投稿しよう!