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「ミャア……」
すると、そこにいたのはサヨちゃんだったそうです。
「なんだあ、サヨかあ……」
ちょこんとそこに座っている愛くるしい猫ちゃんのモフモフとした姿に、恐怖と緊張から一気に解き放たれたナベさんはホっと胸を撫で下ろしました。
サヨちゃんの頭を撫でてやりながら見てみると、廊下と脱衣所の間の引戸も猫の頭一つ分くらい細く開いています。何か興味を持って、勝手に入ってきちゃったんですね。
安心したナベさん、再び湯船に戻ったんですが……。
……あれ? なんか変じゃないか?
しばらくすると時間差で、やっぱりおかしなことに気付きました。
さっき見た人影は明らかに人間が立っているくらいの高さがあったんですが、座った猫はたかだか60㎝くらい。もし後脚だけでぴーんと立ったとしてもせいぜい1mぐらいのものです。さっきの人影とはどうにも背丈が合わないんですよ。
じゃあ、あれがサヨちゃんの影じゃなかったとしたらいったい……。
それ以上考えるのが怖かったので、あれはサヨちゃんの影だったに違いないと、無理矢理ナベさんは自分に言い聞かせてお風呂を出たそうです。
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