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向かい合って食べるものの会話の切り出し方にあぐね、なんとなく気まずいまま食事を始めた。
一口口に入れるとじゅわっとフレンチトーストの美味しさが口の中に広がり、幸せな気分に思わず笑みが溢れた。
「おいしい……」
「口に合ったようで良かった。」
「いえ、とてもおいしいです。フレンチトーストは、お店で出せますよ。」
「これだけは、自慢の料理ってほどのものじゃないけど大学の時、バイト先で覚えたんだ。」
なんとなく話しやすい雰囲気になったので、聞いてみる事にした。
「それで、あの……」
「下着とブラウスは、洗濯中。スーツは、消臭スプレー拭いて日陰ぼししている。」
「ありがとうございます…じゃなくてですね。」
「昨日の事、覚えてない?」
覗き込むように聞いてくる涼平と目が合わせられずに下を向く。
「打ち上げしようと会社の近くの焼き鳥屋に行きましたよね。」
「美鈴が、気取った店より焼き鳥屋がいいって言ったからな。」
「ビールで乾杯して、焼き鳥を数本食べて…あれ?」
涼平が盛大にため息を吐いた。
「そこで記憶ないのかよ。」
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