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グレーゲル・フォル・リールストンは齢28で魔法大国マルグルスの国王陛下の甥であり、トオン領の領主であり、超名門リールストン家の当主である。
そんな御大層な肩書を持っている彼であるが、それよりもっとインパクト大な二つ名がある。
”血濡れの大公閣下”
”血に飢えた大公閣下”
”悪魔の申し子大公閣下”
”生き血を啜る大公閣下”
先の戦争で功績を上げた彼は、そう呼ばれるようになった。
一体どれだけ残虐な行為をして、どんだけ大きな死体の山を築いたのか聞いてみたいところであるが、ただ尋ねたところで答えを聞く前に首を撥ねられるであろう。
とはいえ古今東西、玉の輿に乗りたい女性はごまんといる。
たとえここが北の最果てであろうとも、夫が血に飢えた男であろうとも。
だって相手は国王陛下の甥なのだ。唸るほど金を持っている。妻になればそれ相応の贅沢な暮らしはできるはずだし、そんなお方のお屋敷なら寒さで凍える必要もない。
なのにグレーゲルは未婚である。
そりゃあ更なる繁栄を求めて娘を差し出した途端に殺されるかもしれないのだから、易々と縁談が舞い込むことはないだろう。
でも腐っても王族。性根の腐った貴族はそれこそどこにだっている。娘の命と引き換えにしたって構わないと思う親がいることは否定できない。
しつこいが......でもグレーゲルはいい年して未婚である。大変不思議である。摩訶不思議である。
だからユリシアはこう考えている。
リールストン大公様は、人ではない。熊とゴリラを足して二で割った容姿なのだ、と。人ならざるものだから、どんなに金と権力があっても身を固めることはできないのだと。
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