一章「再会」

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「今日は夜勤じゃないって言ってなかった?」  早希の母、蓉子は看護師をしている。確か母は夜勤のはずだったと思い出し、早希はとっさに会話を切り替えた。  言われて思い出したのか、蓉子は玄関先に置いていたカバンを引っ掴んで仕事用のスニーカーを履き始める。 「急に出勤になったのよ。夕食は冷蔵庫に入れておいたから。あと、洗濯物たたんどいてね。それから、私が行ったらすぐに戸締りね」 「分かってるから! もう、早く行きなよ」  玄関からなかなか出ようとしない母親を早希は押し出そうとする。玄関に降りようとしたところで「裸足!」と蓉子は早希の足先を指さした。  まだ言いたいことはありそうだったが、さすがに急がないといけないようだ。蓉子はやっと玄関ドアを開いた。 「行ってきます」 「行ってらっしゃい」  ようやく母親が出かけ、早希は一息ついてからリビングへ向かう。  電気を付けると、部屋の片隅に取り入れた洗濯物が積んであった。  まずは洗濯物の片づけ、それから夕食にしよう。今晩の予定を頭の中で立てながら、思い出したのは奏音の顔だ。  話があると言っていたが、今度の大会のことだろうか。考えながら予定を済ませ、ようやく早希は自室のベッドに横になった。  スマホを出して奏音にメッセージを送る。 〈宿題終わった?〉  何気ないメッセージがいつもの合図だ。普段ならメッセージに既読がついてすぐに電話がかかってくる。待っている間に宿題をしておこう。勉強に取り掛かり、早希が寝るまでの間、奏音からの着信はなかった。
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