虚の輪1 二人の間

1/1
前へ
/47ページ
次へ

虚の輪1 二人の間

 温かい深皿をベッド脇の机の上に置いてから、ぐったりとベッドに横たわる異母弟、アールの白い髪に手を伸ばす。  怪我からの熱は、まだ、下がっていない。大丈夫だろうか。しかしライが顔を顰めるより先に、アールの、ライと同じ瞳が鋭くライに噛みついた。 「弟扱いするなっ!」  鋭い声が、小さな空間に響く。 「『七つ輪』だとは認めているが、俺はおまえを兄だとは認めていないっ!」  普段通りの、アールの拒絶。その言葉に寂しさを覚え、ライはアールに背を向けた。  そのライの耳に、深皿に匙が当たる音が響く。食べることができるのなら、大丈夫。柔らかく煮込まれた肉が咀嚼される音を聞きながら、ライはアールに見えないように微笑んだ。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加