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「単刀直入に言います。俺と同級生だったこと、社内の誰にも言わないでほしいんです」
俺と同級生……。
俺のこと、やっぱりわかってたのか。
今では立場が全然違うし、こんな下っ端と仲良くしてたら年配の上司が気に入らないだろう。示しもつかない。それは理解できる。
「はい。わかりました」
俺が返事をすると
「僕からの話は以上です。帰っていただいて構いません。お疲れさまでした」
はぁ?それだけ?ただ、それだけかよ。
俺はずっとお前に……。
副社長室を見回す。誰もいない。
「社内では先程のことは伏せます。約束します。しかし俺も副社長に話したいことがあって……」
せっかくのチャンスだ。逃したくない。
「なんですか?」
表情一つ変えないんだな。なんか悔しい。
俺は座っている天宮の前に立ち
「十年前のことを謝りたいんです」
ずっと言えなかった気持ちを伝えた。
「……!!」
あんなに冷たい顔をしていた天宮の表情が変ったのを、俺は見逃さなかった。
「今だけ……。十年前に戻っちゃダメですか?ずっと後悔してました。いつかもう一度会えたら、絶対に謝ってまたあの時みたいに……」
「ダメ!!」
えっ?ダメ!?ダメって言った?
今の天宮でもそんな言葉使うんだ。ていうか、顔が真っ赤だ。彼は手で顔を覆っていた。
「あの、副社長?」
言葉を制止されているが、続きを話してもいいのだろうか。
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