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俺が悩んでいると
「今日この後、時間あるんだよね?」
「はい」
話し方が急にフランクになった気がする。
「俺ももう帰るから。一緒にご飯食べよう?とりあえず、ゆっくりしたいから俺の家で良い?」
昔に戻ったみたいだった。
「はい。喜んで」
とりあえず敬語で返事をしておいた方が得策だよな。
それから天宮の後について行き、地下駐車場に向かう。
「乗って?」
「すげー!」
社内ではなかったためか、本音が出てしまった。黒い高級車、外車だった。
俺は何年後にこんな車に乗れるんだろう。
「失礼します」
助手席に乗る。
天宮が運転し、彼の自宅へと向かった。
「もういいよ。普通に話して」
普通に話すって敬語じゃなくて良いってことか?
「あぁ。うん」
とは言っても、どこから話そうか。
しばらく無言が続く。
「天宮ってさ、運転手とかいないんだな。なんか社長クラスになると、運転手とかいそうなイメージなんだけど……」
どうでもいい話を振ってしまった。
「えっ、うん。別に自分で運転できるし。雇うと費用かかるじゃん。一人で出勤して、帰りも自分のタイミングで帰った方が気が楽なんだよね」
「そっか……」
さっきよりは話してくれるようになったな。
「なぁ、いつから俺のこと思い出してくれたの?」
自分では突っ込んだ質問をしたつもりだった。
「秘密」
「はぁ?なんで?うーん。じゃあ、エレベーター前で会った時、俺、話しかけたじゃん。あの時すぐ俺のことわかった?」
天宮はしばらく無言だったが
「すぐわかったよ。葉月だって」
わかったのにあの態度かよ。もっと感動の再会をしても良かったんじゃ。
あぁ、でも俺が悪いんだ。
十年前、あんなこと言っちゃったから。
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