転機

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「俺、着替えてもいい?スーツ脱ぎたい」  天宮がネクタイを外している。 「いいよ」 「が着れそうなジャージとかあったかな。俺より身長高いし、ガタイ良いからなぁ……」  天宮はクローゼットを見ながらそう言った。  今、下の名前で呼んでくれたよな? 「なぁ?今、下の名前で呼んでくれた?」  俺がそう訊ねると 「えっ……。あっ、ごめん。昔のクセで」  天宮の顔が一気に赤くなる。 「謝んなよ。そう呼んでもらった方が嬉しいし……。俺も昔みたいにって呼んでもいい?」  彼は俯きながらも 「いいけど。プライベートだけね。会社ではダメだよ?」  そう言ってくれた。 「わかってる。さっき副社長室で約束したから」  俺は悠の肩をポンポンと叩いた。 「俺はコンビニから帰ってきたら、ジャケットだけ脱がせてもらえれば大丈夫だから。ありがとう」  悠とちょっと体格が違うし。 「うん」  二人でコンビニに出かけ、酒とつまみを買った。明日が仕事じゃなかったらもっと飲めたのに、明日のために控えめにした。  悠のマンションに帰宅し、リビングの大きなソファーに二人で座る。 「悠、お酒飲めるの?」  高校時代の悠しか知らない。  酒豪ってイメージはできないんだけどな。 「少しね。そんなに強くない。すぐ顔赤くなるし……」  俺のイメージ通りだ。 「壮馬は?強いの?」 「まぁ、ほどほどに……」 「なんかイメージ通りなんだけど」  悠の言葉に 「俺もイメージ通りだった」  フッと二人で笑い合う。  少し空気が良くなってきたな。  今なら過去のことを謝ることができるのだろうか。
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