238人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺、着替えてもいい?スーツ脱ぎたい」
天宮がネクタイを外している。
「いいよ」
「壮馬が着れそうなジャージとかあったかな。俺より身長高いし、ガタイ良いからなぁ……」
天宮はクローゼットを見ながらそう言った。
今、下の名前で呼んでくれたよな?
「なぁ?今、下の名前で呼んでくれた?」
俺がそう訊ねると
「えっ……。あっ、ごめん。昔のクセで」
天宮の顔が一気に赤くなる。
「謝んなよ。そう呼んでもらった方が嬉しいし……。俺も昔みたいに悠って呼んでもいい?」
彼は俯きながらも
「いいけど。プライベートだけね。会社ではダメだよ?」
そう言ってくれた。
「わかってる。さっき副社長室で約束したから」
俺は悠の肩をポンポンと叩いた。
「俺はコンビニから帰ってきたら、ジャケットだけ脱がせてもらえれば大丈夫だから。ありがとう」
悠とちょっと体格が違うし。
「うん」
二人でコンビニに出かけ、酒とつまみを買った。明日が仕事じゃなかったらもっと飲めたのに、明日のために控えめにした。
悠のマンションに帰宅し、リビングの大きなソファーに二人で座る。
「悠、お酒飲めるの?」
高校時代の悠しか知らない。
酒豪ってイメージはできないんだけどな。
「少しね。そんなに強くない。すぐ顔赤くなるし……」
俺のイメージ通りだ。
「壮馬は?強いの?」
「まぁ、ほどほどに……」
「なんかイメージ通りなんだけど」
悠の言葉に
「俺もイメージ通りだった」
フッと二人で笑い合う。
少し空気が良くなってきたな。
今なら過去のことを謝ることができるのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!