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一緒に帰ることも少なくなり、俺も違う奴と絡むようになった。
それが数カ月続いた頃、悠から
「今日、一緒に帰らない?」
久し振りに誘われた。
何も予定なんてないのに
「ごめん。友達と予定あるから」
嘘をついて悠を拒否した。
「そっか」
悠の悲しそうな表情に俺はつい顔を背けた。
家に帰ってずっとモヤモヤしていた。
「何か言いたいことがあったんじゃないか」
ずっと考えていたけど、素直になれなかった。
それから悠も俺に話しかけてくれなくなった。
その一週間後、悠が彼女と別れたことを噂で知った。
あいつ、彼女のことを相談したかったのか?
自分の席で悠の後ろ姿を見ながら考える。
ホームルームが終わり、気づけばクラスメイトのほとんどは部活や帰宅をしていた。俺もそろそろ帰ろうと思い、カバンを持った時だった。同じクラスメイトの田口に「ちょっといいか?」と話しかけられた。
「なに?」
田口はクラスに誰もいなくなったのを確認し
「あのさ、天宮のことなんだけど……」
悠のこと?
「天宮がどうした?」
「あいつ、ゲイってホント?」
はっ?誰がそんなこと。
「知らねーよ。そんなこと聞いたことないけど」
誰だよ、そんな変な噂を流したの。
「それで……。その相手っつーか。彼氏がお前って噂が流れてるんだけど……」
言葉を失った。
なんだよ、それ。
「はぁ?誰がそんな噂流してんだよ。俺、天宮とそんな仲じゃねーし。男が好きなわけねーじゃん。気持ち悪いな」
「そうだよな。そんなわけないよな。いや、一時お前らすげー仲良かったからさ。本当にそんな仲なのかなって思って」
「違うわ。男なんかに興味あるわけないじゃん……。誰が……」
ふと廊下を見た時だった。悠がいたのが見えた。
今の会話、聞かれた?
「悠!」
「えっ?」
振り返った田口を無視し、俺はその後、悠のことを追った。
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