二人の過去

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 あいつ、足そんなに速くないしまだ近くにいるはず。走りながら辺りを見渡す。悠は下駄箱から靴を出し、帰ろうとしていた。 「ちょっと、待てよ!」  強引に腕を掴む。俯いたまま悠は何も発しない。  ふぅと呼吸を整え 「さっきの話、聞いてた?」  彼はコクンと頷いた。 「ここじゃ話しにくいから。一緒に帰ろ?」  彼はまたコクンと頷いた。  校門を過ぎたところで話を切り出した。 「この間はごめん。せっかく一緒に帰ろうって誘ってくれたのに」    彼は無言だった。 「さっきの話だけど、嫌だよな。そんな変な噂……。俺はあんなの信じないから」    その時、悠がボソッと何かを呟いたのが聞こえた。 「……。あれ、本当だったらどうする?」 「えっ?何、もう一回言って」 「俺が壮馬のこと好きだって言ったらどうするの!?」    悠が俺のことを好き……。俺だって……。 「俺だって悠のこと好きだよ。親友じゃん。悩みがあるんだったら言ってほしいし。最近あんま話せなかったけど、また一緒に帰ったり遊べたらいいと思ってる」  悠のことが嫌いなわけではない。むしろその逆。悠が彼女ができる前に戻りたかった。 「どうした?」  悠は何も言わなかった。俯いたままだ。  しかし 「違う!」  急に一言大声を出した。  何が違うんだ? 「何が違うんだよ。わけわかんねーよ」 「好きの意味が違う……」  好きの意味が違う。 「あぁ、あんな冗談な?ゲイって田口が言ってた噂だろ。悠がそんな気持ち悪いこと思うわけねーよな?しかも俺が彼氏なんだと……。マジないわ」    そんなこと気にすんなよと、俺は励ましたつもりだった。けれど、振り返ってみると悠は涙を流していた。
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