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着信の相手を確認して
「ごめん、出て良い?」
彼はそう言った。
「うん。いいよ」
彼は俺がいるその場で電話に出た。
「もしもし。どうした?」
相手が何て言っているのかは聞こえなかったが、女の声がした。
「うん。うん。わかった。また連絡するから。ごめん」
数分も話していない短い会話だった。
まさか彼女でもいるのか?
「誰?彼女?」
平然と問いかけてみた。
「うん。そう」
カクテルを一口飲み、小さな声で彼はそう答えた。
彼女……。いるんだ。いてもおかしくはない。年齢も年齢だし。容姿とスペック的にいない方がおかしい。性格も基本は優しいと思うし。
「そっか。彼女、いるんだ」
どうしてこんな嫌な気持ちになるんだ。
「うん。まぁね。父さんからの紹介だけど……」
お見合いってやつか?副社長だもんな。
相手もかなりの令嬢なのだろうか。
しかし深く聞きたいという気持ちにはなれなかった。
「壮馬は彼女いるの?」
「俺はいないよ」
大学時代に数人付き合ったけれど、上手くいなかった。
原因は俺だけど。高校生の時、悠のことが好きかもしれないと思った。
何年か経ち、あれは寂しさからくる感情なのだろうか、そう考え、大学の時に適当に仲良くなった女の子と付き合った。もちろん初体験も済んでる。
でも別れることになっても、悠がいなくなった時の感情のようにはならなかった。彼女の笑顔とか見ても「可愛い」とは思うけど、なんか違う。
愛おしいとか……。
自分でもよくわからなかったが、そういう感情にならなかった。
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