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身体の関係を持ち、彼女の裸を見てもあまり興奮しなかった。途中で萎えることもあって……。
それが原因で別れた子もいるな。
「そっか。壮馬、モテそうなのにね。いないんだ」
悠がポツリ言ったのを聞き洩らさなかった。
そうか、もうお前は俺に興味なんてないよな。
俺だけがずっと悠のことを追っていたのか。
あの時、自分の本当の気持ちに気付いていたら、何かが変わっていたんだろうか。
結局、重要なことは伝えられないまま帰宅することにした。明日も仕事だし。悠も早く休んだ方が良いだろう。
「ごめん。俺が酒飲んでなかったら送って行けるんだけど。タクシー呼ばなくて良かったの?」
駅まで徒歩で送ってもらった。
「あぁ。終電までまだ時間あるし。大丈夫。今日は悠と話すことが出来て良かった。ありがとう」
「うん。俺も」
悠の表情も会社にいる時に比べ、とても柔らかだ。
「あのさ、会社ではもちろん秘密にする。けど、またこうやって一緒に飲んだりしない?」
俺が誘える精一杯だった。なんてメンタルが弱いんだろう。
「うん。いいよ。俺も楽しかったし」
あぁ、今日はこの言葉を聞けただけで成功と捉えなきゃいけないかもな。
帰る間際、悠と連絡先を交換した。
「じゃあ、また明日。お疲れ」
「お疲れ様」
改札を抜け、後ろを振り返るとまだ悠が立っていた。
嬉しくなり一度手を挙げ、電車に乗るために階段を登った。
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