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彼のためにできること
次の日――。
酒が身体に残ることもなく、出社する。
すると
「昨日はありがとうございました。助かりました。娘もなんとかなりまして……」
高木さんが話しかけてきてくれた。
「いえ。入力も間に合いましたし、良かったです。娘さんも大丈夫そうで安心しました」
「何か困ったことがあったら、今度は自分が手伝いますので。言ってくださいね」
「ありがとうございます」
律儀な人だな。
高木さんはヒラヒラと手を振り、自席へと戻って行った。
でも、少しでも役に立てて良かった。お礼を言われ悪い気はしなかった。
さて、今日も頑張らないとな。
悠は酒とか身体に残ってないかな。無理してないと良いけど。
心配になってメッセージを送ってみた。
<昨日の酒、残ってないか?>
仕事が始まる前に送ったメッセージは、午前休憩時にも返信はなかった。
携帯、見ていないのか?
それとも忙しいだけなのか?
やはり俺との関係は断ち切るつもりなのだろうか?
モヤモヤしながら仕事を続けた。片想いをしている女性の返事を待っているような心境なんだろうな……。ふと思う。
俺はまだ悠のことが好きなのだろうか。
昼休憩時、社員食堂で昼食を食べていると携帯に<新着メッセージ>の文字が表示された。
慌ててタップをする。
あっ、悠だ!
<大丈夫だよ。壮馬は大丈夫?>
良かった。返事をくれた。
これだけで嬉しいし、自分が嫌われてなかったことに安堵する。前のように連絡が取れなくなるのかと一瞬考えてしまった。すぐ返信をした。
<俺も大丈夫。あまり無理するなよ>
なぜだろう、このやり取りだけで気分が上がる。
「どうしたんですか?良いことでもあったんですか?」
「あっ、お疲れ様です」
俺に話しかけてきたのは、経理部で席が隣、一応俺の教育係的な出雲さんだった。
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