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珍しいな、話しかけてくるなんて。
「良いことは特にないんですけど。この前、久し振りに再会できた友達がいて。その友達から連絡が来て。なんつーか、俺、友達少ないんで、それだけで嬉しくなりました」
このくらいなら話してもいいよな。
「そうなんですか。葉月さん、いつも真剣な顔しながらパソコン見つめているので。さっきニヤけてたので、びっくりしました」
俺、さっき一人でニヤけてたのか。
一人で笑っているのを見られてしまった。
気色悪い。気を付けないとな。
「マジっすか。教えてくれてありがとうございます」
「いえ、それじゃ」
たった一言だけ声をかけ、出雲さんは行ってしまった。
出雲さんも不思議な人だよな。あの人もいつも一人だし。新卒なのに、同期とかいないのかな。
俺のメッセージに悠から返信が来ることはなかった。
まぁ、区切りが良かったし。気にしない方が良いだろう。
何か共通の話題とかあれば良いのに。数時間一緒に過ごしただけじゃ、今のあいつの生活なんてわからなかった。社長不在の副社長だもんな、忙しいことしかわからない。
悠の家に行ってから二週間が経った。
相変わらず、俺の生活は変わらない。
悠に連絡したいけど、気軽に「飲みに行こう」とは言えないし、あいつからも連絡がなかった。
社内で一瞬見かけることはあるが、約束通り話しかけるようなことはできないし。日中は人の目があるから、隙もない。
「はぁぁぁ……」
大きなため息が出てしまった。
それが聞こえてか
「どうしたんですか?」
隣の出雲さんが話しかけてくれた。
「すみません。大きなため息が出てしまって……」
「まぁ、緊張するし、ずっとパソコン相手だから疲れますよね?」
年下なのに気を遣わせて、申し訳ないな。
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