彼のためにできること

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「寝不足……だと思うから大丈夫」  いや、大丈夫じゃないだろ。  ていうか、隣にいた奴、何やってんだ? 「すみません。救急車呼んでもらっていいですか?」  俺より年上だろうが、どう動けばいいのかアタフタしている男に指示を出す。 「あっ、はい。わかりました」  慌てて携帯を取り出し、救急へ電話をしている。 「ここじゃ……。みんなに心配かけるし、仕事の邪魔になるから……」  悠が俺の腕の中で呟く。  俺たちの様子を心配そうに見つめている職員が何人かいた。 「わかったよ」  救急車が来ても近い場所で、担架が運びやすいところ……。あそこしかないな。 「ちょっと移動する!」  悠を抱きかかえ、会議室へ移動をする。 「ちょっと……。重いだろ?」 「重くねーよ。悠くらい、持ち上げられるわ」 「恥ずかしい……」  お姫様だっこ状態で運ばれることに対してそんな言葉を漏らしたが、抵抗する元気はないみたいだ。  会議室へ運び、ソファーへ寝かす。  しばらくすると、救急車のサイレンが聞こえてきた。  一人で乗ってもらうわけにもいかないから。  上司とか呼んだ方がいいのか? 「悠一人じゃ乗せられないから。誰か信頼できる社員とかいる?」  さっき救急車を呼んでくれた男が後ろにいるから、その人に一緒に乗ってもらうか。関係性もどこの部署かもわからないけど。 「壮馬が良い……」  はっ? 「俺?」  少し首を動かして反応をした。  俺でいいのか……?  副社長命令ってことで許してもらうか。 「あの、すみません。経理部の葉月と言います。俺、一緒に救急車に乗るんで経理部の部長に連絡してもらえませんか?」  どこの部署かもわからない人に頼んだ。 「あっ。はい!わかりました」  受付に事情を説明し、近くの会議室まで救急隊に来てもらった。担架に乗せてもらい、俺も一緒に救急車に乗る。 「何か原因とかわかりますか?」  救急隊に訊ねられるもわからない。 「詳しいことは……。ただ本人は寝不足だと。あと、見た感じ急激に痩せている気がします」 「そうですか。わかりました」  何か重い病気じゃないと良いんだけど。  俺たちを乗せた救急車は、受け入れ先の大学病院へと向かった。
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